プラスチックスのセカンド・アルバムはデビュー・アルバムからわずか8か月後に発表されました。時代の進み方は急ピッチでした。彼らはその間にアメリカ・ツアーを行っています。これは当時としては画期的なことでした。

 プラスチックス、ヒカシュー、Pモデルとのテクノ御三家の中で、プラスチックスは圧倒的なお洒落具合と世界制覇感で抜きんでた存在となっていました。後ろ向きな意味での日本的なものから自由なプラスチックスは実に眩しい存在でした。

 この作品はファーストとはがらりと趣きが変わりました。もはやプラスチックスというよりも、プラスティックスと書くべきでしょうか。音作りの要、佐久間正英は、「セカンドになると、逆に全体的にモチーフがアナログ的に回帰して」いると語ります。

 もはやピコピコ・サウンドという形容は当たらず、音楽的になってきました。佐久間はプラスチックスに係わりだした頃には、自分が楽器を弾くと他のメンバーとの差があり過ぎるので、シンセに特化していたと語っていましたが、今作ではちょっとベースも弾いているようです。

 「みんな気持ちがミュージシャンぽくなってて、いろんなことやってみようっていう、少ししゃらくさいことに(笑)なってますね」とは佐久間の弁です。この表現が一番しっくりきます。そう、「しゃらくさい」アルバムです。

 明るくて可愛くかったファーストに比べ、屈折した部分もあって、いわばパンクからニュー・ウェイブに変化したようなイメージです。いい加減でおちゃらけなファーストに対して、シリアスなセカンド。バンドは音楽的に成熟してきました。

 この頃のプラスチックスはテレビにもよく登場していました。イギリスではなくアメリカのニュー・ウェイブの人たち、B52sやトーキング・ヘッズとの親交が深く、同じステージに立ってもいます。繰り返しますが、当時としては画期的なことです。

 その後、彼らはアイランド・レコードと契約を交わし、ファーストとセカンドから曲を選んで、アレンジを変えたりしたベスト盤的なサード・アルバムを世界に向けて発表します。これがまたちょっと違う表情を見せていて秀逸でした。

 サードではビートが効いていた印象がありますが、この作品ではそうでもありません。ピコピコは薄れて、格段に音楽的ではあります。しかし、ビート音楽っぽいところはさほどなくて、アルバム全体を覆う空気は比較的狭い会場でのパーティーのようです。

 私が一番好きなのは「ピース」から「ダンス・イン・ザ・メタル」の並びです。「ピース」は三人が交互にボーカルをとる飄々とした曲で、後者は一転して佐藤チカのモノローグをサポートする曲です。このモノローグがドイツ人の英語のような味わいです。

 今から振り返ると、彼らの活躍は奇跡に近いほどでした。さほどメジャーになったわけでもないのに、とても強く印象に残っているバンドです。全曲日本語アクセントの英語詞というのがあまりに似合っているカッコよさの化身のようなバンドでした。

Origato Plastico / Plastics (1980 Invitation)