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そのバングラが強烈なリズムでもって、UKインディアンの間で大流行し、ひるがえってインド中を席巻して今に至っています。インドの産んだ世界的なリズムと言えると思います。サンバやレゲエと肩を並べる普遍性を獲得した音楽なんです。贔屓目でしょうか。
英国ではかつてバングラ・ビートと呼ばれ、1980年代にはインド人コミュニティーで大いに流行し、その枠をはみ出していきました。今や、特に騒ぐこともない当たり前のシーンを築いています。かっこいいです。
マルキット・シンは2008年にパンジャビ・アーティストとしては初めて大英帝国勲章(MBE)を受けたバングラを代表するアーティストです。最も売れたバングラ・アーティストとしてギネス・ブックにも認定されています。
パンジャブ州生まれの生粋のパンジャビーです。1981年にパンジャブの大学コンテストで優勝した時にもらった「ゴールデン・スター」の呼称を自身のバンドに付けましたが、そのバンドと彼の関係はブルース・スプリングスティーンとEストリート・バンドのようなものだそうです。
シンは1984年にバーミンガムに居を移し、以来、イギリスを主戦場に活躍を続けています。その結果がMBEです。授賞式ではバッキンガム宮殿の外にファンが集まり、さながらインドのお祭りのようだったようで、インドの新聞にも誇りをもって取り上げられました。
この作品は、インドに住んでいた時に当地で手に入った唯一のCDです。インドの誇りのはずなのに、例によってCDが手に入りにくいことこの上ありません。ベスト盤はあまり好きではありませんし、リミックスは遠慮したいのですが、四の五の言ってられません。
結果的にはベスト盤で正解でした。何と言ってもマルキット・シンの代表曲が網羅されています。今やクラシックとなったデビュー曲「ナッチ・ギッデ・ウィッチ」から、トレードマークとなっている「トゥータック・トゥータック・トゥーティアン」などの80年代の曲は当然のことです。
彼のキャリアは長きにわたっているので、加えて90年代から21世紀の曲も入っています。「ベッカムに恋して」にも取り上げられた「ジンド・マヒ」なども含まれていて、マルキットのキャリアを俯瞰することができます。
典型的なバングラ・ビートにのせて伸びやかで力強い歌声が響くサウンドはとても素敵です。リズムが甘くなる傾向にあるバングラではなくて、当然本格的なディープなバングラで、さすがに第一人者であることを感じさせる堂々たる音楽です。
しかも、かなり洗練されていて、その絶妙のバランスが素晴らしいです。これを基準にバングラに接するとなまじっかなものでは満足できなくなる、ということで、インドの大衆音楽の主流の一つであるバングラのベンチマークとしてお勧めです。
Greatest Hits Remixed / Malkit Singh (1999 Virgin)