「雨を見たかい」は歌詞のせいでとても話題の多い曲でした。その歌詞は表面上は♪晴れた日に雨が降ってくるのを見たかい♪という天気の歌に過ぎません。しかし、時代は1970年のことです。これを字面通りに受け止める人はいませんでした。

 1970年といえば、アメリカはベトナム戦争真っ盛りで、次第に戦争への疑問が高まってきた時期でした。トンキン湾事件のねつ造が発覚するのは翌年のことです。CCRのメンバーも徴兵経験者ですから、雨をナパーム弾だと解釈する人がいてもおかしくありません。

 実際、そうとられて、放送禁止処分を受けたと言われています。後に曲を作ったジョン・フォガティーがこの説を否定するわけですけれども、当時の時代背景に思いを馳せるとあながち深読みでもなかったのではないでしょうか。

 もう一つの解釈はバンドの状態を歌ったというものです。今一つぴんとは来ませんが、バンドが崩壊寸前だったということを暗示しているのだと言います。1970年にはロックはシリアスに捉えられていたことが良く分かります。

 この作品は、その「雨を見たかい」を含むCCRの6枚目のアルバムです。デビュー・アルバムが1968年7月、これが1970年12月ですから、わずか2年で6枚です。凄いハイ・ペースです。しかし、このペースはここまで、次の作品は1972年4月で、それが最後となりました。

 トム・フォガティーはこの作品の発表後に脱退してしまいます。そして、次のアルバムは残ったメンバー3人が平等に曲を提供して、しかもそれぞれが歌うという超民主主義作品です。ということは、これがオリジナルCCR最後の作品です。

 これまで同様、ジョン・フォガティーが全ての曲を作っており、リード・ボーカルも全部彼です。そして、オルガンやホーンも多用されるようになっていますが、それもジョン・フォガティーが担当しています。ワンマンぶりが目立ちます。

 アルバムからのシングル・カットは「雨を見たかい」のみでしたが、B面にはこのアルバムから「ヘイ・トゥナイト」が収録されていて、そちらもヒットしています。「雨を見たかい」は全米8位とまずまずの大ヒットです。

 アルバムとしての完成度は初期作品には全く及びません。意欲的なインスト曲が収められていますし、ホーンやキーボードの使い方もかなりこなれてきています。しかし、アルバム全体を覆うちぐはぐ感は如何ともしがたいです。

 曲自体はカントリー風味を利かせた名曲「雨を見たかい」を始め、彼ら独自のぶきぶきしたぶつ切りの魅力を湛えた曲ばかりです。一つ一つは抜きんでてはいないものの、けして悪くはありません。

 しかし、バンドの状況なんでしょう。演奏と歌とのマッチングも微妙にずれているような気がします。何ともはらはらするアルバムです。それだけ素直なアルバムだということで、ジョン・フォガティーとバンドの心中を察するとヒリヒリするものがあります。そこが魅力です。

Pendulum / Creedence Clearwater Revival (1970 Fantasy)