「ロックンロールを救え」とフォール・アウト・ボーイが戻ってきたのが2013年のことでした。4年ぶりの新作は熱狂をもって迎えられ、見事に全米初登場1位を獲得しています。彼らの運動はその後も続き、2年ぶりに発表されたのがこのアルバムです。

 「全米初登場1位!!」と日本盤の帯に書いていないのは、このCDが日本でも米国と同時に発売されたからです。日本でも大きな人気があることが分かります。当然、この作品もめでたく全米1位となり、FOBの人気のほどを示しています。日本でもトップ10ヒットです。

 「ロックンロールと言う音楽が、日ごとに忘れ去られていくような感じがする」とスポークスマンのピートが語っています。自分たちがデビューした2001年頃には「街にロックが流れていたのに、もう一度そういう状況を取り戻したい」。

 日本では、テレビからバラエティー番組のBGMとして懐かしのロックがやたらと流れてきていて、歴史上最もロックが流れていると言ってよいほどですが、少し考えてみると、特に21世紀に入ってロックは肩身が狭いように思います。

 全米ヒットチャートでもヒップホップやダンス系、はたまたR&Bに女声ボーカルなど、微妙にロックではない曲が多いです。若者にとってロックがお洒落じゃなくなったということかもしれません。爺婆音楽。私なども反省しなければいけません。大人のロックなんて言うからです。

 そんな状況に挑んでいくフォール・アウト・ボーイはカッコいいはずなんですけれども、裏ジャケットに写っているメンバーの姿を見ても、どうにもいけてません。そこが何をやっても微笑ましい彼らの魅力でもあります。

 今回もシングル曲「センチュリーズ」では、ダビデとゴリアテよろしく、「自分をちっぽけに思ってしまう気持ちを、巨人をにらみ倒すほどの汗と根性と信念の圧倒的パワーに、どうやって変えているのか」ということを表したとピートが語っています。ちょっと微笑ましいです。

 サウンドはこれまでのフォール・アウト・ボーイに比べるとあっさりしているという評判ですが、いつものようにロックが炸裂しています。ヒップホップ的な感覚もあるリズムに乗せて、フックの利いたメロディー・ラインを持った佳曲が並んでいます。

 あっさりしたと言われるのは、くどいまでのエモーショナルな部分が薄れたからです。ただ、薄れただけで、他のバンドに比べるとかなりエモではあります。何でもシャウトするパトリックのボーカルも深みを増していますし、全体に少し落ち着いた感じもあります。

 どの曲を取り出しても同じアルバムからの曲だと分かるようにしたと曲作りの中心となるパトリック・スタンプが言っています。バラードが入っているわけでもなく、確かに各楽曲が同じ色合いに染まっています。ただし一曲一曲の完成度は高いです。陰影には富んでいるんです。

 聴きどころは多いです。彼らの溌剌としたロックはとても気持ちが良いものです。アメリカに日本のようなカラオケ文化があれば、彼らの楽曲はもっと浸透したのにと思います。気持ち良く歌える楽曲ばかりです。

American Beauty / American Psycho / Fall Out Boy (2015 Island)