「官能のファンク・リズム第3弾」です。彼らはここまで極めて順調にアルバムをリリースしてきています。当時の英国ではザ・ポップ・グループはさほど評価が高くなかったと日本のメディアには書かれていますが、本当にそうであればリップ・リグの順風満帆はなかったでしょう。

 この作品は初めて通常のLPでの発売でした。これまでと同じフォーマットで出したかったようですが、コストもかかるのでレーベルの了解が得られなかったそうです。しかし、このアルバムが最もダンス・オリエンティッドであるところが皮肉っぽくてよいです。

 アルバム発表当時、ライナーノーツで北中正和さんが「明日のポップスを作り出すヒントをより多く埋蔵している」と記されていたとライナーに書かれています。さまざまな要素が乱雑と言っても良いやり方でぶちまけられていますから、それも首肯できます。

 それも通常のロックやポップスのフォーマットからはかなり離れた形でなされていますから、未来を予見する音楽だと思う以外に折り合いのつけようがなかったのかもしれません。ただし、ニュー・ウェイブ時代にあっては、彼らが唯一というわけではありませんでした。

 そして、これまでのアルバムの中では間違いなく最も聴きやすい作品です。ダンスへのアプローチとボーカルの多用がその要因です。前作までのヒリヒリするような解体感覚ではなくて、音楽は統合に向かっています。

 参加ミュージシャンはさほどこれまでと変わっているわけではありませんが、中心人物のうちネネ・チェリーとドラムの元ポップ・グループのブルース・スミスが若くして結婚して忙しくなったために、制作途上でしょっちゅう消えてしまったそうです。

 そのため、ボーカルにはアンドレア・オリヴァーの名前もありますし、ドラムには、スティーヴ・ノーブルの名前があります。ブルースの叩きだすリズムがこのバンドの顔だと思いますが、この作品では、12曲中4曲がスティーヴのドラムです。

 スティーヴは英国の即興中心のジャズ畑の人だそうです。ツアーでは南アフリカのジャズ・ドラマーのルイ・モホロが参加することもあったそうで、リズム面に気を使っていたことはよく分かりますが、ブルース不在というのも何とも言えません。

 全部に係わっていたのはギャレス・セイガー一人のようです。まさにコレクティブです。であれば解散する必要もなさそうですが、彼らはこのアルバムの後、改名して1枚出しただけで、そこで終わってしまいました。

 もう一人の中心人物ピアノのマーク・スプリンガーはソロの道を歩みます。彼のピアノは面白いのですが、ファンク・サウンドとの相性は本当に良いのか少し疑問です。しかし、そこが引っ掛かりになって耳を奪われることも多いので、それも狙いでしょうか。

 リップ・リグのサウンドは古くなってはいませんが、今の時代にあってはメインストリームの近くに位置づけられます。彼らが先鞭をつけたサウンドがその後の音楽界において大きな流れとなったことの証左です。

Attitude / Rip Rig & Panic (1983 Virgin)