懐かしいです。私の若い頃のクラシック入門盤です。まんまとレコード会社の策略に乗せられ、デヴィッド・ボウイのジャケットに惹かれてふらふらと買ってしまいました。何だか悔しいですが、大人の戦略には敵いません。

 「ロックスター、デヴィッド・ボウイがクラシック作品を手掛けた?発売当時大きなセンセーションを巻き起こした名作」だと書いてありますが、そんなに大きなセンセーションだったかなと疑問符がいくつもつきます。

 デヴィッド・ボウイは、ハンガリー生まれの指揮者ユージーン・オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団の演奏になる「ピーターと狼」のナレーター選びが難航していると聞くや、自ら志願してナレーションを務めることになりました。

 何でも当時6歳だった息子ゾウイ君がこの曲を気にいっていたからという、何とも父親らしい動機なんだそうです。もともと役者もやっていますし、ナレーションはお手の物だったこともあり、見事にこれを演じ切っています。

 ボウイのことを知らないクラシック界の方々も、素晴らしいパフォーマンスだと絶賛したということですから、実力です。もともとロック界に二つとない素敵な声ですし、ボーカリストとしては秀でた演技力を持つ人ですから、当然と言えば当然です。

 しかし、ボウイの参加はこれだけです。B面に収められていたベンジャミン・ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」はナレーションがありません。ナレーション付きで演奏されることも多いのに何と言うことでしょう。

 「ピーターと狼」はプロコフィエフがモスクワの子供音楽劇場に出かけた際に、「子どものための、新しい交響的な作品」を以来されて、ほんの1週間ちょっとで書き上げた曲です。各楽器が登場人物を示すモチーフになっている楽しい作品です。

 ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」もバロック時代の作曲家パーセルの主題を引用した変奏曲とフーガによる作品で、これまたそれぞれの楽器がソロで活躍するので、入門にはぴったりです。各楽器の音と特徴を学ぶことができます。音楽教育映画用だそうです。

 どちらも音楽の時間に聴いたように記憶しています。子どもにとってはオーケストラを学ぶにはぴったりの作品です。ただ、改めて聴いてみるとせわしないです。大人向けではないと思います。聴いていて忙しい。各パートは時間が短くて、あっという間に終わってしまいます。

 「ピーターと狼」は1936年の作品です。ディズニーの「ファンタジア」が1940年です。アニメの方が見やすかったと思います。ナレーションはやはり音ですから、演奏と被る気がします。落ち着いて聴いていられない。ボウイの声は特徴的ですし。

 無粋なことはよしましょう。これはボウイ・ファン垂涎の珍盤と言ってよいでしょう。めでたく紙ジャケCDで復刻されて嬉しいです。なお、CD化に際して「くるみ割り人形」の組曲がカップリングされています。同じ指揮者、同じオケの演奏で、何とも落ち着いた素晴らしい演奏です。

Prokofiev : Peter And The Wolf, Britten : Young Person's Guide To The Orchestra / David Bowie, Eugene Ormandy (1978 RCA)