ザ・ポップ・グループは2010年に再結成しています。正味活動期間がとても短かった彼らなので、再結成後の期間の方がよほど長いです。2015年には新作を発表することになる彼らですが、これはその前にファンにプレゼントされた編集盤です。

 帯では「ザ・ポップ・グループはその活動初期からものすごい速さで変化し続けていた。今回の復刻はその最初期に行われた実験の極めて重要なドキュメントだ」とボーカルのマーク・スチュワートの言葉が引用されています。

 一方で、マークはインタビューに答えて、ネットに出ているファンのコレクションやら何やらアーカイブを一通りチェックしたら、「アルバム1枚作れちゃうくらいの音源が出てきたんだ」とも語っています。こちらの方が年齢相応のコメントです。

 彼らの未発表曲集は「狂気の時」が最初で、これは35年ぶりの二枚目ということになります。「狂気の時」はまだ活動の余韻冷めやらぬ時期のものでしたが、こちらは音源は同時期のものでも、ファンが歳をとったからか、随分落ち着いた感じがするのが不思議です。

 この作品に収められたのは9曲で、全くの未発表曲は2曲だけです。残りはライブ・バージョンだったり、初期のデモだったり、CD化されていなかったシングル曲だったりします。まさに曲が集まっちゃったんだという状態です。

 冒頭の「ホエア・ゼアズ・ア・ウィル」はスリッツとのスプリット・シングルで発表されていた曲です。もう一曲「アムネスティー・レポート3」もシングルB面曲の未発表ミックスです。この2曲は正規発表されたこともあり、群を抜いて素晴らしいです。

 若い彼らでしたが、スタジオで作りこんだ方が凄味があります。若い頃に聴いたザ・ポップ・グループの延長にあるので、素直に気持ち良くなりました。カッコいいザ・ポップ・グループの過去音源として最高です。

 デモは「シー・イズ・ビヨンド・グッド・アンド・イーヴル」で、何とロキシー・ミュージックのアンディー・マッケイのプロデュースだそうです。発表されたのはデニス・ボーヴェルのダブ処理を施したものでしたが、こちらはストレート。案外、普通の曲だったんだと新たな発見です。

 残りは未発表曲を含め、全てライブ・バージョンです。若い彼らの裸の姿を聴くことができます。「狂気の時」にも感じましたが、こうして時を隔てて改めて向かい合ってみると、余計に20歳前後の若者らしさを感じます。

 特にファーストに収録されていた「夢を売りわたすな」がそうです。この可愛らしい演奏は、80年当時だったら発表していなかったのではないかと思われます。歳をとって脇が甘くなりました。

 30年前のバンドの未発表曲集ですから、購入するのはほとんどが私のような往年のファンでしょう。それを考えると、茶飲み話にぴったりの企画として珍重すべき作品です。なんやかんや同好の士の間でさかなにするのに持ってこいでしょう。

Cabinet Of Curiosities / The Pop Group (2014 Freaks R Us)