強烈なジャケットです。これはお猿ドッキリではなくて、切り取られていますが、オリジナルでは画面の左側に豹がいます。豹に襲われるヒヒの写真です。有名な動物写真の特集があると必ず入るジョン・ドミニスの奇蹟の一枚です。

 ザ・ポップ・グループは解体後それこそ四分五裂になりました。その一つがこのリップ・リグ&パニックです。ザ・ポップ・グループにいたギターとサックスのギャレス・セイガーとドラムのブルース・スミスが結成したバンドです。

 「ゴッド」は彼らのデビュー作で、45回転の12インチ盤2枚組でした。45回転の方が音がよい、あるいはDJで使いやすいということで、ちょうど流行っていた時代です。彼らの場合は音質にこだわったという態度の表明ではなかったかと思います。

 先行してシングルが何曲か出されましたが、そのうち「アルティメイト・イン・ファン」がスネークマン・ショーのアルバムに収録されました。ここではボートラ収録ですけれども、彼らの当時の日本での人気の形が分かるというものです。

 ポスト・パンクの極北にあったザ・ポップ・グループから飛び出したお洒落なバンドという立ち位置でした。過激さはそのままにダンサブルな最先端な音を出すバンドということで、話題になりました。当然、日本盤も発売されています。

 メンバーは前述の二人に、ザ・ポップ・グループの作品にも参加していたピアノのマーク・スプリンガー、それにベースのショーン・オリバーを加えた四人組です。マークはギャレスやブルースとは学校時代からの友だちだったそうです。

 一応、四人だけが正式メンバーとしてクレジットされているのですが、何と言っても話題はボーカルのネネ・チェリーでした。当時まだ16歳、ジャズ・レジェンドの一人ドン・チェリーが継父です。その後活躍する彼女のほぼデビュー作と言ってよいと思います。

 ジャケットの裏面には4人の写真の真ん中にネネが写っていますから、バンドの顔でもあったことが分かります。ついでにこの写真ではギャレスの顔が凄いです。長らく鼻に矢を刺しているのかと思っていましたが、画面のノイズでした。

 私は初めて聴いた時には、からっからやん、と思いました。乾いたドラムやパーカッションの音色が特徴的です。ザ・ポップ・グループのアルバムに横溢していた焦燥感のようなものは薄らいでいて、より明るいからっとしたファンク風サウンドが展開します。

 ジャズ・ファンクであり、パンクであり、ピアノの即興ありと雑食性の高い音楽ですけれども、全体に明るくて軽いところがいいです。軽薄というのではなくて、しなやかな軽さを持った音楽です。自由度は高く、やりたい放題のサウンドが眩しいです。

 その分、捉えどころのないサウンドでもあり、途中でほおり出されたようなあっけらかんとしたところもあります。よい音で録音されており、重いザ・ポップ・グループから解放された伸びやかなサウンドがあれもこれもと欲張られています。面白いアルバムです。

God / Rip Rig & Panic (1981 Virgin)