エルトン・ディーンはソフト・マシーンに入る前、ロング・ジョン・ボールドリーのブルーソロジーというバンドにいました。そのバンドのキーボード奏者が二人の名前に肖って新たな芸名をつけることとしました。エルトン・ジョンの誕生です。超トリビアでした。

 ソフト・マシーンの4作目です。顰に倣って「フォース」と名付けられました。復刻帯のコピーが面白いです。「ジャズ、ロック両分野で考え得る最も進んだ音を作り出すブリティッシュ・サウンズの王者ソフト・マシーンの最新アルバムです。」

 「ブリティッシュ・サウンズ」です。ブリティッシュ・ロックでもジャズでもないところに当時の担当者の苦悩が読み取れます。同じ帯で「機械文明社会に生きる現代人必聴の知的ロックの王者」とも書いていますから、まあ、ロックなんですけれども。

 このアルバムからは完全インストゥルメンタルになりました。ボーカリーズもなし。声は一切入っていません。メンバーは前作と変わりませんが、ゲストにホーン陣を加えて、より一層鮮明にジャズ寄りになってきました。

 ロックなのかジャズなのか。意味のある論争ではないかもしれませんが、どっちかに分類しないとどうにも居心地が悪いです。レコード屋さんでも置き場に困ります。しかし、そうは言っても、どちらにも決めがたい、ということで「ブリティッシュ・サウンズ」なのでしょう。

 彼らのルーツにジャズがあることを再認識させてくれた前作から、さらにジャズ寄りになりました。それもフリー・ジャズ系です。演奏技術もどんどん向上して、各自の超絶技巧を凝らしたサウンドが楽しめます。

 この結果、ロバート・ワイアットはどんどん孤立していくことになります。彼はフュージョンに関して、ロックのリズムでジャズをやるよりも、ジャズのリズムでフォークをやった方が面白いと語っています。そりゃあ居ずらいことでしょう。

 さらに「ここはジャック・デジョネットのように叩いてくれ」などと言われることに耐えられなかったとも言っています。ボーカル曲をやろうとしても、誰もサポートしてくれないとも。バンドは3対1の分裂状態で、それがこの作品に緊張感を与えてもいるのでしょう。

 いろいろと理由はあるのでしょうけれども、俗っぽく言いますと、校長の息子でオックスフォードの哲学者のマイク・ラトリッジはやはり真面目過ぎて、ロバートとは合わなかったということでしょう。よくケヴィン・エアーズやデヴィッド・アレンと一緒にやってたなと思います。

 ロバートを除く3人の生真面目さが音によく現れていると思います。実に折り目正しい演奏が続けられます。当時、ロック界はジャズ界に引け目があったものですから、彼らの勇猛果敢な挑戦は尊敬の念をもって見つめられていました。

 私はジャズのリズムでフォークの方で、どうしてもロバート寄りになってしまいますが、このアルバムの魅力は分かります。前作に比べると録音も良くて、潔い求道者的なサウンドは今聴いても古びておらず、一つの完成形であったのだなと思います。

Fourth / Soft Machine (1971 CBS)