アルバム・タイトルをシリーズものにすることは誰しも一度は考えることのようです。ソフト・マシーンは数字にすることにしました。デビュー・アルバムは特に1とはなっていませんでしたから、「ボリューム2」の次をどうするか考えた際に出てきたアイデアだと思われます。

 レコード会社もメジャーなCBSに移籍していますし、本国イギリスでは1作目と2作目が合わせて発売されていましたから、特に「サード」とする必要もなかったように思いますが、アルバム・タイトルに意味などないという主張が感じられます。

 それと根を同じくすることとして、本作からはボーカルが「6月の月」を除いて消えてしまいました。このためにロバートの居場所が失くなっていくわけですから、ソフト・マシーン史的には案外大きな意味を持っているのではないでしょうか。

 ソフト・マシーンは前作の後、トリオからいきなり7人組になりました。ヒュー・ホッパーは「三人でも素敵で力強いプレイを出来たけど、ステージで1時間も演奏するとちょっと飽きてしまうんだ」と語っています。加わった4人はみんな吹奏楽器奏者です。

 加わった4人のうち3人はジャズ・ピアニストのキース・ティペットのバンドから借りていて、もう一人のリン・ドブソンはジョージー・フェイムやマンフレッド・マンと共演経験を持つフルート奏者です。4人ともジャズ系と言えるわけです。

 しかし、7人ものミュージシャンをまとめることはできず、結局、元の三人にエルトン・ディーンを加えた4人組に落ち着くことになりました。そうして制作された作品がこの「3」です。2枚組でレコードの片面に20分程度の曲が1曲ずつ、計4曲のアルバムです。

 結果的にこのアルバムはソフト・マシーンの全作品の中で最もセールスが好調なアルバムとなります。彼らはレーベルの中では、最も売れないロック・バンドなのか最も売れるジャズ・バンドなのか判然としない状況にあったということです。

 この作品は前2作とは大きく異なっており、彼らのルーツがセシル・テイラーのレコードにあることを素直に思い起こさせてくれるアルバムです。これまでのアイデアを生のまま提示したような短い曲ではなくて、延々と続く長尺の曲ばかりとなったことも大きいです。

 最初の曲はヒュー・ホッパーの手になる「フェイスリフト」で、これはライブで録音されています。2か所のライブから編集されていますが、この録音が何とも質が悪いです。他の曲はそれほどではありませんが、全体にもっさりした感じを受けるのはプロダクションのせいでしょう。

 しかし、そうした音の悪さの中から立ち上がってくるのはソフト・マシーンの求道的な姿勢です。ロックとジャズのフュージョンは、ジャズからはマイルス・デイヴィスの「ビッチェズ・ブリュー」があり、ロックからはこの作品があるというところです。

 ワイアットの「6月の月」だけは彼のボーカルのおかげで、前2作とのつながりを感じます。ほぼ彼が一人で作ったこちらが好きか、ホッパー・ラトリッジ組のジャズ的サウンドが好きかで、聴き手のこの後の音楽人生が変わってしまうことでしょう。

Third / Soft Machine (1970 CBS)