ZZトップと言えば髭。まるで双子のような髭の二人をフロントマンとするバンドですが、三人組の残りの方、髭がちょっとしか生えていないドラマーの名前がビアード、髭です。皮肉なものです。名前をカウントすれば髭の三人組と言えるかもしれませんね。

 ベストヒットUSA世代の方にはお馴染み、くるくるギターのZZトップです。彼らは1969年にテキサス州で結成され、以降、現在に至るまで一度もメンバー・チェンジしていないという立派なバンドです。

 この作品はZZトップのカタログの中では最も売れたレコードです。ヒット・チャートでは全米トップ10にようやく入った程度ですが、1年以上もトップ20に入っていたとは尋常じゃないです。その結果、今や1000万枚を超える売り上げを記録しているといいますから凄いです。

 彼らはデビュー以降、プラチナ・アルバムをものするほどの人気を誇りましたが、ディスコ・ブームを目の前にして、2年以上にわたる休暇をとります。その間にビリー・ギボンズとダスティー・ヒルの髭が伸び放題に伸び、音楽的にも満タンに充電された模様です。

 休養明けの彼らはシンセサイザーを導入します。復帰後第二弾として、より大胆にシンセを導入してお化けアルバムになったのがこのアルバムです。ただし、シンセは確かに鳴っていますけれども、注意して聴かないと意識に上ってきません。

 サウンドは昔ながらのブギー・スタイルが貫かれていて、それをシンセで味付けしたという80年代仕様だということです。米澤和幸さんのライナーによると、「テクノをテクノとすら思っていないような」サウンドです。完全に融合しているわけです。

 宣伝文句は、「闇をつんざく炎の閃光。ほとばしるパワーを満載したハード・ドライヴィン感覚」です。気合が入っています。この「ハード・ドライヴィン感覚」というところがZZトップの真骨頂であろうと思います。

 彼らのエピソードの中で最も彼らのことをよく表しているのが、ガソリン・スタンドでのテープの売れ方が尋常でないということです。何と本作品の40%がそうだったということです。アメリカ中のトラック野郎が買い求めたわけです。

 このエピソードと共に聴くと、このアルバムのワクワク感が倍増します。目の前にテキサスの大荒野が広がってきます。そして綺麗な金髪美女が続々と登場してくることでしょう。下世話と言えば下世話なことこの上ないサウンドです。

 もう一つ忘れてならないのがMTVです。続き物になっている一連のPVは大いに人気を博しました。ジャケットにも登場するホット・ロッド「エリミネイター」と、やたらと大人数の美女軍団、それにZZトップの3者によるPVは脱力と高揚感を同時にもたらしてくれました。

 問答無用の高揚感をもたらしてくれるサウンドはとてもカッコいいです。ビリー・ギボンズによる幾重にも重ねられたギター・サウンドはゴージャスですし、これがシンプルなブギー・スタイルと相まって、本作品を後味がすっきりした大傑作とすることに成功しています。

Eliminator / ZZ Top (1983 Warner Bros.)