「真似のできない並はずれたファッション・センス。華麗に、セクシーに、スーパースターは気どり屋さん。人気最高頂No.1ヴォーカリストが放つ世紀のビッグ・セラー!!」。この頃のロッド・スチュワート作品の帯は面白すぎます。復刻したワーナーさんに拍手。

 いかに当時のロッド・スチュワートがスーパースターだったか一端を垣間見ることができるのではないでしょうか。日本でもロッドはスーパースターでしたが、ただ、どうも日本の芸能人的な捉え方をしていたように思います。私生活ばかり。

 この作品は英米で1位に輝くロッドの代表作ですけれども、ディスコに走ったとして、評論家受けは最悪だったということです。「多くのファンは気に入ってくれたけど、すべての評論家たちには嫌われた」とロッドも語っています。

 そのせいで、このアルバムからの大ヒット曲「アイム・セクシー」について、「今までに自分が描いた作品のなかで、ぶち壊したくなるような、邪魔になるような歌があるとしたら、それはまさにこの曲だ」と回想するはめに陥っています。

 この辺りのお話は新鮮に響きます。日本ではザ・芸能人的にさまざまな金髪女性との浮名の数々で有名でしたが、硬派のロック・ボーカリストとして彼を捉えている人はさほどいなかったからです。

 「アイム・セクシー」などは、ちゃらちゃらしたスーパースターに最もふさわしい曲です。ディスコ・ビートに典型的なディスコ・ストリングスを配した楽曲は時代を代表する曲になっています。印象的なメロディー・ラインは秀逸で、ディスコの代表曲です。

 日本ではこの曲はとてもすんなりとロッド・スチュワートの代表曲として受け入れられました。ただ同時に、調子に乗ってるなあ、と別の意味で反感を買ったことも事実です。大たいこのジャケットですから。もてることを見せびらかすとは何事かと。

 ところで、冒頭の「アイム・セクシー」が目立ちすぎるので、全体がディスコ・アルバムのように思われがちですが、このアルバムもトム・ダウドのプロデュースのロック・アルバムで、ディスコ曲は他にありません。

 しかし、何度聴いても、ああそうだったなと改めて思うほど、「アイム・セクシー」の印象が強すぎます。他の曲が地味なんです。前作とほぼ同様のロッド・スチュワート・バンドの演奏になりますが、前作に比べるとやや元気がない感じです。

 もちろん中にはモータウンのフォー・トップスのカバー曲「シャドウズ・オブ・ラヴ」のようなどすの利いた素晴らしい楽曲もあります。演奏も頑張っているのですが、やはり地味です。いっそ、全部ディスコにしてもよかったかもしれません。

 後にロッドはロック歌手ではなく、スタンダード歌手となっていきます。何でも歌える器用な人ですから、ディスコも本筋。ザ・ボーカリストとしてディスコに挑戦したアルバムとして貴重です。1曲だけなんですが。

Blondes Have More Fun / Rod Stewart (1978 Warner Bros.)