ボウイは1981年のデビュー当時、「暴威」と名乗っていました。メジャーからのデビューで「暴威」だったので、当時、インディーズばかり聴いていた私は産業パンクだろうと思って、完全に聴かず嫌いでした。

 彼らはその後、着実に活動を積み重ね、86,7年頃には超メジャー・バンドとなっていました。しかし、残念ながら、当時、私は日本にいなかったので、これにも乗り遅れます。そして、帰国した時にはすでに解散していました。

 自分史的には同時代でありながら、完全にスルーしてしまったバンドですので、一度ちゃんと聴いてみようと長い間思っていました。それで紙ジャケ再発の波に乗って、購入したのがこのベスト盤です。

 ヴィジュアル系の元祖として、ロックを一般化した功績は大きいですし、何よりもメジャーでありながらカリスマ・ロッカーであるという矢沢以来の存在だったのがボウイです。数々の伝説に彩られて、今でも大きな人気を誇っているバンドですから、気にもなります。

 このベスト盤は、東芝EMI時代に発表された全シングル曲と一部カップリング曲を収録したもので、初のベスト盤ですし、当時はこの作品でしか聴けないシングル・バージョンが3曲収められていたことから、ファンの間でも人気が高かった模様です。

 ボウイには、ボーカルの氷室京介とギターの布袋寅泰というカリスマ性のあるスターが二人います。どちらもバンド解散後もさまざまな活動で成功しています。この二人の関係をボウイ解散の真相や再三にわたる再結成の噂と絡めて語る人が極めて多いです。

 ジョンとポールのような意味合いがあるようで、このこともボウイの伝説性を高めています。しかし、このアルバムを聴くだけでも、まるで世界観が違う二人がよくバンドで一緒にやっていたなと思ってしまいます。

 ビジュアル系を志す人全てが手本にする氷室京介のスター然とした佇まいと、音楽オタク的な路線全開の布袋寅泰とは随分と違う気がするのですが、そういう二人のケミストリーがバンドを特別なものにしていたんでしょう。

 サウンド面では、まずは高橋まことのドラムが気になりました。最初の曲を始め、かなりモータウンっぽい色合いです。80年代に流行ったドラム・サウンドとはちょっと違います。エコーがあまりかかっていないように聞こえる音色で、独特の味をもった力強いリズムです。

 曲調がさまざまな上に、深い布袋からいろんな蓄積を出してきては一曲一曲で実験をしているようなサウンド作りです。それを一見ストレートなロックに外見を整理して提示しているように見えます。なかなか懐の深いサウンドです。

 そこにヴィジュアル系スターの氷室のボーカルが一人怪しく響くわけで、お互い全然違う指向の者同士がぎりぎりのところで共演しているように思えて、そこがなかなか面白いです。さすがは伝説のバンドです。

Singles / BOOWY (1988 East World)