大みそかになりました。皆様、今年もつたないサイトを訪問して頂き、ありがとうございました。

 年末はザッパ先生で締めます。それでは皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。

 オン・ステージ・シリーズもいよいよ第5巻。終わりが近づいてきました。今回は1枚目がマザーズ・オブ・インヴェンション時代、2枚目が82年バンドのステージです。明確に1枚ずつテーマが分かれるという分かりやすい構成になっています。

 1枚目の最も古いものは1965年のフィルモア・ウェストでのライブ音源です。数々の伝説を残したフィルモア・ウェストはそもそもオープンしたのが1965年11月ですから、同ホールにとっても最初期の演奏となります。ザッパ先生のボーカルも若い若い。

 ここでの驚きは、2曲目の「チャールズ・アイヴス」のリフ部分が、ザッパ先生がプロデュースしたキャプテン・ビーフハートの最高傑作とされる「トラウト・マスク・レプリカ」の「ザ・ブリンプ」のバックグラウンドになっていることが明かされたことでしょう。良い話です。

 マザーズ時代はバンドとしてのノリが楽しいです。バンド仲間の悪ふざけも重要な部分を構成しています。悪ふざけにはローディーのカンザス・J・カンザスや、エンジニアのディック・カンク、ロード・マネジャーのディック・バーバーまで登場します。楽しそうです。

 しかし、やはり悪ふざけの中心はドラムのインディアン、ジミー・カール・ブラックおじさんです。また、珍しく大活躍しているのは後のリトル・フィート、ローウェル・ジョージです。彼がドイツの入国管理官を演じる「ジャーマン・ランチ」は寸劇の傑作です。

 ロイヤル・アルバート・ホールから出演禁止を食らうことになる、破天荒なステージは音だけでも十分に窺えるのですけれども、やはり見たかったなあと強烈に思わせてくれます。ジミヘン・バンドのノエル・レディングの踊りなどは、音だけでは分かりませんから。

 何ていうことはない曲ですが、私はローウェル・ジョージのボーカルが聴ける「愛はここに眠る」が好きです。前衛的な演奏も素晴らしいのですが、こうした普通のブルース曲も味があります。全方位に光を放っていたマザーズならではです。

 うって変わって2枚目は82年バンドです。このバンドにはスティーヴ・ヴァイがギターで参加していたことが目玉です。彼のギターは「スタント・ギター」と表記されていて、ザッパ先生のヴァイに対する評価のほどが分かります。

 音源は半分くらいがジュネーヴでのライブです。他はミュンヘン、バルザーノ、フランクフルトとなっていますが、このツアーは悪名高いパレルモでの暴動騒ぎで終止符が打たれた不幸なツアーでした。ミラノでは蚊の大群に襲われてもいます。

 全部で12曲の演奏ですが、最後はザッパ先生の♪ステージに物を投げるならコンサートは終わりだ♪というMCに続いて、本当にコンサートが終了してしまう模様が収められています。この頃のヨーロッパは何だったんでしょう。

 演奏は当然素晴らしいです。難曲「RDNZL」も難なくこなしていますし、「ザ・ブラック・ページ#2」でのギター・バトルも素晴らしい。こんな演奏に恵まれていながら、観客が暴れるとは全く訳が分かりません。

You Can't Do That On Stage Anymore Vol.5 / Frank Zappa (1992 Ryko)