ストラングラーズはボストン・ストラングラーから取った名前だそうです。ボストン絞殺魔と呼ばれた殺人鬼ですね。プロレスラーにもそんな名前の人がいてもおかしくありません。そういえば、ハングマンという名前のプロレスラーはいましたね。

 この作品は、前作からわずかに5か月という短いインターバルで発表された二枚目のアルバムです。この間隔の短さが時代を反映しています。当時は何かとせっかちな時代でした。世の中がわさわさしていました。パンクの時代ですから。

 半分くらいは前作制作時に録音されていたようですし、間隔が短いですから、前作とほぼ同じサウンドではないかと思うところです。実際、似ていると言えば似ているのですが、違うと言えば違います。ディテールこそが重要ですから、違いにこそ注目してしまいます。

 一言で言えば、パンクっぽいです。前作をパンクではないと言いきっておいてなんですけれども、この作品のサウンドは当時想定されていたパンクそのものだと言っていいかもしれません。今、パンクと聞いて思い浮かぶサウンドとは違うかもしれませんが。

 小野島大さんはライナーで「パンキッシュになったのではなく、彼ら自身がパンク体質そのものなのだ」と書かれています。実際、当時のストラングラーズはかなり暴力的で、あちらこちらでいざこざを起こしていましたし、ライブは暴動に近い状態だったようです。

 そういう意味ではパンク体質だったわけです。しかし、もちろん素質は十分だったのでしょうが、自ら引っ張っていったというよりも、否が応でも巻き込まれてしまったというような気もします。パンクの渦中なんですが、ちょっと周辺の存在。面白い位置です。

 今作は前作に比べて充実度が高いです。わずか5か月なのに余裕を感じさせます。時の人となっていて、チャート・アクションもよかったことからスーパースターの佇まいすらあります。前作のルーツ全開も面白かったですが、ストラングラーズの代表作といえばこちらです。

 タイトル曲はパンクのアンセムの一つとなりました。♪ノー・モア・ヒーローズ・エニイモア♪ですから、これはそのまんまパンクスの主張っぽいですけれども、彼ら自身を含め、パンクの方がヒーローが多いですよね。その矛盾がパンクスです。

 シングル・ヒットはもう一曲「サムシング・ベター・チェンジ」です。こちらも何度もテレビで見たのでよく覚えています。ジャン・ジャック・バーネルの飛び跳ねるベースがカッコいい映像でした。さすがにシングルはみんなキャッチーな曲です。

 ストラングラーズは当時、英国で最も人気のあるバンドの一つでした。暴力的な雰囲気をまといながらも、サウンドはとても分かりやすく、前作にあったドアーズ的な韜晦も影を潜め、ストレートにロックしています。シンセも導入されて新しい衣装もまといました。

 こちらも70年代後半のブリティッシュ・ロックを代表する作品に数えられると思います。革命的なサウンドというわけではありませんが、当時の時代の気分を要約しているようなところがいいです。大衆に根を張った音が聞えてきます。

No More Heroes / The Stranglers (1977 United Artists)