オン・ステージ・シリーズには毎回テーマがあると書いてしまいましたが、第三集、第四集と明確なテーマがなくて後悔しています。この第四集に至っては、第三集までにはあった一言解説もなくなっていて途方に暮れております。

 この第四集もいろいろなライブが集められており、いくつか目玉となる楽曲が含まれています。私としては、何よりも「スティーヴィーズ・スパンキング」を推します。82年バンドがローマで演奏したヴァージョンで、ギター部分は映像作品「ビデオ・フロム・ヘル」と同じです。

 もともと天才ギター少年スティーヴ・ヴァイの変態ぶりを歌った曲で、彼のギター・ソロが見せ場となっていましたが、このヴァージョンは凄いです。10分間に及ぶザッパ先生との白熱のギター・バトルが展開します。

 最初のソロがスティーヴ、続いてフランク、そして最後は二人でデュエット。どれも凄いです。映像も見ているので、スティーヴの変態っぽい指裁きと表情が浮かんできます。一方、ザッパ先生はあまりスティーヴの方を見ないでギターに専念しています。

 先生は煙草をネックに挟んでタイム・キーピングをしているのですが、これをスティーヴが吹き消すシーンとかかっこいいことこの上ありません。どちらかと言えばスティーヴの方がしなやかで、ザッパ先生はごつごつしたソロ。終わらないで~、と祈ってしまうソロです。

 双璧をなす目玉は、キャプテン・ビーフハートがボーカルをとる「拷問は果てしなく」です。この曲はもともとキャプテンのために書かれた曲ですから、「オリジナル・バージョン」のクレジットが光ります。76年のバンドですからニューヨーク・ライブの頃ですね。

 ちょっと軽めの演奏なんですけれども、キャプテンの尋常じゃないボーカルが引き締めています。この二人は高校時代からのお友達ですから、もっと共演している音源が残っていてもおかしくないのですが、あまり発表されていないのが残念です。

 そして、ジャズ界の大御所アーチー・シェップのソロも収録されています。84年バンドがマサチューセッツでライブを行った時の演奏で、シェップさんがマサチューセッツ大学で講師をしていた関係で実現したそうです。

 ここでは珍しいアラン・ザボーのキーボード・ソロも聴かれますが、メインはもちろんアーチーのテナー・サックスです。さすがは84年バンドですからジャズとも相性はばっちりです。ひょろひょろしたソロがカッコいいです。

 この他、ほんの短い参加だったデヴィッド・ログマンのドラムが聞こえるというマニアな喜びもありますし、小ネタは尽きません。今回も80年代のバンドが中心で、88年バンドまで少し入っています。

 加えて、マザーズ・オブ・インヴェンション時代の音源も含まれていて、ザッパさんの声の変質まで楽しめる構成になっています。それに「地獄はない。地獄なんてものはない。ただフランスがあるだけ」という名台詞まで入っていて、今回もお得感が高いですよ。

You Can't Do That On Stage Anymore Vol.4 / Frank Zappa (1991 Ryko)