未来が写るカメラを手に入れたとしたらどうでしょう。人助けにも使うでしょうが、お金儲けにも使いますよね。競馬に競輪、ロト6なんて楽勝ですから、簡単に大金持ちになることができるでしょう。

 この映画はそういう作品です。なかなかよくできたアクション・スリラー作品でした。主演は、インド人俳優にしては線が細いニール・ニティン・ムケーシュと、濃厚な色気の漂うビパシャ・バスの二人です。

 残念ながら映画は大ヒットというわけではなく、平均的なヒット作に区分されています。しかし、音楽の方は結構ヒットしました。というのも主題歌は1981年の大ヒット曲のリメイクなんですね。モダンなアレンジがなされていますが、メロディーはほぼそのままです。

 元歌は「ロッキー」という映画からです。あのシルベスター・スタローンの「ロッキー」とは何の関係もありません。大スターとなるサンジャイ・ダットさんのデビュー作品としてそこそこのヒットを記録しています。

 オリジナルは同じタイトルで、インド映画音楽界の巨匠RDバーマン師匠の手になる楽曲です。歌手はアシャ・ボスレとキショール・クマールというこれまたインド映画音楽界のトップスターの共演です。この名前だけでインド人の心に深く響くものがあります。

 映画はまるで関係ありませんが、この曲のタイトルを拝借し、ついでに歌も拝借しています。そして何と主演のムケーシュさんが歌うという禁じ手を使っています。昔の名曲だからできる技なんでしょうね。ビパシャも頼まれたようですが、こちらは断ったそうです。

 この作品の音楽監督は売れっ子のプリタムと、ゴーラヴ・ダスグプタというあまり見かけない人物の二人となっています。共同作業というよりも、曲ごとに分業しているようで、タイトル曲はダスグプタの手になっています。

 クラブ・ミックスとでも言えるあまりインド的要素の少ない四つ打ちミックスになっていて、オリジナルの色気が失われているようにも思いますが、そこはムケーシュさんではないシンガーによるラウンジ・ミックスの方に救われています。

 プリタムの楽曲は2曲のみです。相変わらずキャッチーな「ガザブ」とねっとりしたバラードの「モハバット・アアプセ」です。前者は歌姫スニディ・チョーハンの歌唱が冴える見事な楽曲です。かっこいい。

 ダスグプタの楽曲のうちの一曲「パワー」は、直截に♪金は力だ♪と繰り返すあからさまな楽曲です。全体にこの人の楽曲は少し感覚が古い気がします。その後の活躍もあまり見られませんから、インド人受けもあまりよろしくなさそうです。

 小品と言えば小品なんですけれども、私はタイトル曲のビデオが結構好きなんです。曲そのものはカッコいいですし、踊りのキレがなかなかいいです。ビパシャ・バスのワイルドな魅力が満載です。

Aa Dekhen Zara / Pritam & Gourav Dasgupta (2009 Eros)