通称「1978」のタイトルで通っているアルバムですが、原題をちゃんと訳すと、「1978:神は去った。怒りが残った」と何とも物騒なタイトルです。またバンド名「アレア」には
「インターナショナル・ポピュラー・グループ」と冠がつけられています。

 イタリアを代表するバンドであるアレアの第6作目です。タイトル通り、1978年の発表です。このバンドの大きな特徴だったのはデメトリオ・ストラトスのボーカル・パフォーマンスでしたが、彼は翌年白血病で亡くなってしまいました。彼の最後のアルバムです。

 アレアは1972年に結成され、ファースト・アルバムでいきなり国民的な人気を獲得していきました。初期には政治的な姿勢も目立っていたのですが、次第に距離を置くようになり、レーベルを移籍して初の作品となるこの作品が彼らの到達点だとも言われます。

 一般にイタリアのバンドはポップスでなければプログレと呼ばれましたから、彼らもイタリアン・プログレの範疇で語られます。また、アンサンブルの妙味が持ち味で、しかも演奏が達者だし、即興もあるので、ジャズ・ロックとも呼ばれます。

 どちらから想像しても間違いというわけではありませんが、アレアの特徴は何と言っても地中海、バルカン世界の香りがするところです。変拍子もとても自然です。ここに極めて多彩なデメトリオのボーカル・パフォーマンスが舞い踊ります。

 また、イタリアのバンドの多くは抒情的なところがあるのですけれども、アレアに限ってはそうではありません。そこがこのバンドに独特の位置を与えていると思います。一際高く聳える山にして、追随者がさほどいない孤高のバンドです。

 デメトリオは、エジプト生まれのギリシャ人で、アジアの歌唱や比較音楽学、民俗音楽学などを学んだ声楽家でもあり、現代音楽の作品にも参加していますし、自身、幅広い音域を持つ類まれなボーカル・パフォーマーでした。

 このアルバムでも彼のボーカルは凄いです。もちろん歌詞も歌っているわけですが、まるで楽器のようです。それも多彩な音色がでるわけですから、シンセサイザーに相当します。さらにシンセで変調した声まで使っていますから探求精神旺盛です。

 坂本理さんの熱のこもったライナーによれば、アレアは「不幸にしてイタリア国内において絶大な支持を得、海外へと進出することなくリーダーのデメトリオ・ストラトスを失ってしまった」という立ち位置にあります。

 確かにPFMやバンコ、イ・プーといった海外でもそこそこ有名なイタリア勢に比べると、アレアはかなりマニアックな感じがいたします。しかし、日本でもじわじわと繰り返し言及されてきましたから、70年代、80年代に比べると、今やその存在感は大きいです。

 アレアはデメトリオ抜きでの活動も行っていましたが、オリジナル・メンバーの一人、ジュリオ・カピオッティが2000年に他界して解散してしまいました。しかし、彼らの音楽へのリスペクトは続いており、2010年には復活を遂げています。いい話です。

1978 Gli Dei Se Ne Vanno, Gli Arrabiati Restano! / Area (1978 Ascolt)