中毒になったと言っておきながらなんですが、サイプレス・ヒルのアルバムを買ったのは久しぶりのことでした。なんと17年ぶり。その間、スタジオ・アルバムは5枚も出ています。一番売れたのは2作目ですから、まあ何とか辻褄は合いますかね。何のだか知りませんが。

 前作から6年ぶりという長いインターバルで発表された久しぶりのアルバムだということで、いろいろと変化があります。まずはレーベルが変わりました。スヌープ・ドッグが監督を務めるプライオリティ・レコードに移籍しています。

 スヌープは、「サイプレス・ヒルが、最も重要なヒップホップ・グループの一つであることは、誰しもが認める事実だよ。その音楽的才能に加え、ラティーノ系ヒップホップとして初めてプラチナを記録したと言う実績を持つ西海岸発のグループだ」とえらい入れ込みようです。

 「この契約は完璧な結婚みたいなもんなんだよ!」とまで言っています。力が入っていますから、このアルバムには豪華ゲスト陣が参加しています。ゲストが入り乱れるプロダクションはヒップホップ特有です。みんな兄弟。

 一番注目を浴びているのが、レイジ・アゲンスト・ザ・マシーンのトム・モレロです。サイプレス・ヒルはヒップホップではありますが、かなりロック寄りです。一番近いのがレイジあたりのミクスチャー・ロックでしょう。ということで見事なコラボです。昔から友達らしいですし。

 そして、リンキン・パークのマイク・シノダ、システム・オブ・ア・ダウンのダロン・マラキアンと同系統のミックスチャー・ロック勢が並びます。ヒップホップ一家からもピットブルやヤング・デー、エヴァーラスト、それにラテン系のマーク・アンソニーと綺羅星のごときゲスト陣。

 一つ忘れていましたが、随分前から彼らは4人組となっています。ドラムのエリック・ボボが加入しているんです。そして、これまでとの最大の違いは、メイン・プロデューサーがDJマグスから、B=リアルに変わったことです。

 途中の作品を並べてみると、さほど違いは目立たないのかもしれませんが、私のように2作目からいきなりこの作品まで飛んでしまうと、同じバンドだとは思えないほど違います。ラップは前面に出てきていて、明らかに中心となっています。

 トラックもドラマーが入っていることもあって、かなりロック寄りです。おどろおどろしい陰鬱な雰囲気が中毒性の高い魅力だった彼らのサウンドでしたが、ここではとても明るいお天道様の下でパーティーをしているかのようです。

 とても明るい。そしてサウンドもとても分かりやすいです。ロック的というよりも、これはむしろロックの棚に置いた方が親切だというものです。サンプリングも使い方が一般的なヒップホップと同じということで、私のような中抜け組は新しいバンドとして捉えた方が楽です。

 そういう目で見ると、とても良くできたアルバムであることが分かります。カッコいいサウンドなんですね。ヒップホップの側から提示するミクスチャー・ロックの快作といったところです。チャート的には恵まれませんでしたが、力作であることは誰しも同意されるでしょう。

Rise Up / Cypress Hill (2010 Priority)