過去の名曲ではなくて、今現在流行っている曲を網羅したコンピレーショ ン・アルバムというのは、今でこそ数多いですが、英国のNOWシリーズが草分けです。第一弾が出た時には驚きました。正規盤だと分かった途端、狂喜乱舞しながら買って帰ったものでした。

 この「ナウ24」は、私が英国に住んでいた時期のものです。1992年の終わりから1993年の第一四半期にかけて英国のヒットチャートを席巻していた楽曲が並んでいますので、聴いていると当時のことが髣髴とされて、ほのぼのした気持ちになります。

 イギリスでは、毎週土曜日に昼飯を食べながら、チャート番組を見ていたものです。この作品に収められた曲はほとんどその番組で見ました。タイトルを忘れましたが、45分の番組で、ヒット・チャートをカウントダウンしつつ、2、3曲はしっかりPVが流れました。

 いわば「ベスト・ヒットUSA」的な番組ですが、パーソナリティーはいませんし、アーティストや曲の紹介はテロップでした。過不足のない良い番組でした。当時は全曲順番に見せればいいのになんて思っていましたが、MTVなどで見ると意外に面倒くさいものですよね。

 もちろんそうしたチャート番組だけではなくて、ロンドンでは街角でも良く聞いたものです。日本よりも音楽が身近にある感じがしました。そういうわけですから、この作品を流していると当時の生活が髣髴とされるわけです。

 嬉しいのは、この2枚組全37曲の大作には、一発屋ではないものの、時が経ってほとんど忘れられている楽曲が収められていることです。たとえば、ビラヴドの「スイート・ハーモニー」。裸のPVが物議を醸しましたが、遅れてきたヒッピーのような素敵な曲でした。

 英国の場合、リヴァイヴァル・ヒットがそれなりにあるところがこうしたコンピ盤にいいアクセントを添えます。ここでは、ウルトラヴォックス2号の「ヴィエナ」、ブルー・ベルズの「ヤング・アット・ハート」、シスター・スレッジの「ウィー・アー・ファミリー」がそれに該当します。

 当時のチャートを席巻していたのは、レイブ勢です。レイブはイベントを指す言葉ですから、特定の音楽のジャンルとは緩やかに結びついていただけですが、何とも他に言いようのないバンドが活躍していました。

 2アンリミテッド、スナップ、ロビンSなどがそれにあたります。今ではほとんど忘れられているのではないかと思いますが、当時の勢いは凄かった。町中から流れていたものです。時代に密着していますから余計に懐かしい。

 もう一つはレゲエです。ラガマフィン・スタイルのレゲエが流行っていました。ここでもスノーの「インフォーマー」、シャバランクスの「ミスター・ラヴァーマン」、シャギーのカバー「オー・キャロライナ」と続く流れは鳥肌ものです。カッコよかった。

 一方、ベテラン勢はチャート的にはさほどでなくても貫禄で収録されています。ブライアン・フェリー、ポール・マッカートニー、アニー・レノックス、デュラン・デュランなどなど。まさにごった煮ですが、とても楽しいです。チャートをなめてはいけません。

Now That's What I Call Music 24 / Various Artists (1993 Virgin, EMI, Polygram)