まったくもってスキャナー泣かせのジャケットです。ぎんぎらぎんのモノクロ写真に写る四人の姿はどこか非現実的でとても素敵です。全体にチンピラ感が漂い、ゴージャスなチンピラという訳の分からないコンセプトになっています。

 この作品はクイーン史上初の全米制覇を果たしたアルバムになりました。シングル曲も「愛という名の欲望」と「地獄へ道づれ」の2曲が大ヒットしました。どちらもこれまでのクイーンのサウンドからは離れていますが、とてもいい曲です。

 「愛という名の欲望」は大そう曲に不似合いな重い邦題です。曲はもろにロカビリー調の遊び心に満ち溢れたものなんですが。変なビデオとともに繰り返し流されたこの曲はとてもいい曲ですけれども、これが全米1位というところには驚きました。軽いタッチで全米攻略です。

 一方の「地獄へ道づれ」は、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったシックの楽曲にヒントを得たということです。ジョン・ディーコンさんのベース・ラインはベースを志す人が一度は弾いてみる超スタンダードとなっています。

 これまでのクイーン・サウンドと一線を画しているとよく言われる理由は、このファンキーなベース・ラインによるところが大きいのではないかと思います。全米をツアーして回ったクイーンの面々が肌で感じたアメリカを軽やかに表現したのがこのアルバムではないでしょうか。

 前作はアルバムとしての完成度がとても高く、硬派なエンターテインメントでしたけれども、この作品はもっと気楽に自分たちの考えるアメリカンを表現しているように思います。各楽曲の完成度は高いのですが、全体を並べてみると力が抜けている感じがします。

 その象徴が「ドント・トライ・スイサイド」です。♪自殺しようなんてするな♪という直截なメッセージを歌っているわけですが、この楽曲がこれ以上ないくらいお気楽です。確かに自殺を思いとどまらせる効果があるかもしれません。何だかバカバカしくなる。

 このアルバムはさらにクイーン史上初めてシンセサイザーが登場したアルバムです。これまで頑なにシンセの導入を拒んできた彼らですが、まあそんなに意固地にならなくても、と大人な思いに囚われたのでしょう。

 シンセの導入でサウンドが大きく変化したわけではありませんけれども、姿勢の問題として、硬派を貫いてきたクイーンが柔軟になったというのはアルバム全体を覆う空気感に変化をもたらしています。

 ロカビリーで全米を制覇した事実とともに、クイーンに激しい思い入れを持っていたファンには少し残念に映ったことは否めません。箱庭的なクイーン世界からは完全に決別していますから、戸惑ったファンも多かったと思います。

 しかし、曲の完成度は高い。クイーンの音楽的な才能の凄まじさは、そういう世界観に頼らなくても全く問題ありませんし、そもそもどんなサウンドになっても、フレディーの灰汁の強いオーラは総てを輝かせます。凄いバンドでした。

The Game / Queen (1980 EMI)