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しかし、サウンドの方は、普通に考えるところのクイーン・サウンドが確立したアルバムです。制作い至る経緯を追ってみると、まず、前作が全英チャートのトップ5入りを果たして、意気揚々と乗り込んだアメリカ・ツアーはブライアンの肝炎で頓挫してしまいました。
ここで立ち止まったクイーンは、すぐにこのアルバムの制作にかかります。ブライアンはまたしても病気で入院してしまいますが、ギター以外のパートを先に録音するといった形で制作が進みました。苦肉の策と言えるでしょう。
しかし、それが良かったのかもしれません。考える時間が増えたことで、クイーンの幅広い音楽性が遺憾なく発揮されて、万華鏡のようなクイーン・ワールドが全開することになりました。遊園地のようなアトラクションぶりです。
冒頭の「ブライトン・ロック」からして話題に事欠きません。グレアム・グリーンの小説にもなったイギリスの避暑地ブライトンのお菓子をタイトルにした曲で、ブライアンのじょんがらギターが炸裂します。本当に津軽じょんがら節のようなギターです。
当時、海外で有名な日本人アーティストと言えば、寺内タケシさんと富田勲さんでしたから、ブライアンが寺内さんのじょんがらギターを知っていたとしてもおかしくはありません。三味線のようなギターさばきには驚いたものです。
そして、何と言っても「キラー・クイーン」です。この曲はイギリスでは2位となる大ヒットとなり、ここ日本でも少年少女の心を捉えました。衝撃的でしたね。何だと言われると困りますが、普通のロックではありません。超のつくエンターテインメントですよね。
歌詞からして、普通は使わないような単語がたくさん使われ、辞書を引いてはため息をついていたものです。何とも凄いセンスです。日本の田舎の日常生活からは百万光年離れている別世界の音楽でした。
後は11曲もあるわけですけれども、バラードあり、ロックあり、後にメタリカがカバーするメタル曲「ストーン・コールド・クレイジー」あり、カウボーイあり、ジョン・ディーコンさんのデビュー作あり、なんだかんだで最後まで来てしまいます。あっという間。
その中では「キラー・クイーン」のB面にも入っていた「フリック・オブ・ザ・リスト」が懐かしいです。フレディーのボーカルと曲作りの魅力が遺憾なく発揮されていて、発表当時から大好きでした。アルバム中のちょっとした曲までカッコいいわけです。
というわけでジャケット以外は非の打ち所のない作品です。何かが足りないとすれば、それは自信だったのではないかと思います。もちろん人並み外れた自信を持っていた彼らですけれども、スーパースターとしての自覚をもてるだけの自信まではなかなかというところです。
Sheer Heart Attack / Queen (1974 EMI)