「ボヘミアン・ラプソディー」のプロモ・ビデオに使われたあのイメージがそのままジャケットになっています。メンバーは最初は嫌がったとは信じられないくらい、ミック・ロックさんの写真は彼らの音楽を過不足なく表現しているように思います。

 クイーンのセカンド・アルバムは、ヒットしましたが、一般的には最も知られていないクイーンのアルバムということになっています。しかし、超エンターテイナーになる前、ハード・ロッカーとしてのクイーンの最高傑作として一部にはとても評価の高いアルバムです。

 ガンズ・アンド・ローゼズのアクセル・ローズや、スマッシング・パンプキンのビリー・コーガン、さらにはスタント・ギターのスティーヴ・ヴァイなど、一癖も二癖もあるヒーローたちが、このアルバムのファンに名を連ねています。

 アルバムはA面がサイド・ホワイト、B面がサイド・ブラックに分かれていて、統一感のあるコンセプト・アルバム仕様になっています。それぞれブライアン、フレディーが曲作りを担当していて、一曲だけロジャーの曲がサイド・ホワイトに含まれています。

 前作からわずか8か月にして、スタジオ技術の格段の向上が見られます。ややもったりした音だった前作に比べ、シャープな音像ですし、何回重ねるねん、と突っ込みたくなるギターとボーカルも素晴らしいです。ブライアンもスタジオ技術を極限まで突き詰めたと語っています。

 彼らは、この2枚のアルバムを作るためにプロダクションに対して巨額の借金を重ねたということです。彼らの意識はすでに大スターだったということでしょう。適当なところで妥協を重ねていては後の大成功はありません。

 ブライアンのサイド・ホワイトもいいのですが、フレディーのサイド・ブラックはファンタジーの世界を描いていて秀逸です。後にプログレッシブ・メタルなる音楽が流行ることになりますが、ここにその元祖を見出すことができます。

 クイーンを酷評する英国メディアの論点の一つにこうした生活感のない歌詞の問題があります。ポエトリーの盛んな英国らしい批判ですけれども、そんなことには全く頓着しないフレディーの姿勢が素晴らしいです。

 クイーンのサウンドは、ブリティッシュ・ハード・ロックの正統派ではありますが、スピーディーに目まぐるしく展開するところが、素晴らしいです。そこにコーラスやギター・オーケストレーションが厚みを添えていきます。

 このアルバムからは「輝ける7つの海」のシングル・ヒットが生まれました。これは前作の最後にインストとして入っていた曲です。生活感のない折り目正しい爽やかな曲で、私の購入した最初のクイーンのレコードです。シングルでした。

 全体を通してジェット・コースターのような目まぐるしい展開ながら、一続きのドラマになっていて聴き応えがあります。ブリティッシュ・ハード・ロックとしてのクイーン・サウンドはここに完成を見たと言って差し支えないでしょう。

QueenII / Queen (1974 EMI)