インド映画も日本でちょくちょく公開されるようになりました。インド・ファンとしては大変嬉しいことです。まだまだ偏見も多いですけれども、世界最大の映画大国インドの映画が面白くないわけないということが少しずつでも理解されるようになってほしいものです。

 これは2006年の大ヒット作品「さよならは言わないで」のサウンドトラックです。音楽監督はシャンカル・エヘサーン・ロイの三人組です。作詞はジャヴェッド・アクターで、このチームは2003年に「たとえ明日が来なくても」で大ヒットを飛ばしました。

 両作品はどちらもニューヨークが舞台のロマンスで、スーパースターのシャールク・カーンが主演、歴代作品の中でも上位にランクされる大ヒット作品です。しばしば混同してしまうんですよね。まあ多くの人には関係ない話でしょうが。

 この作品にはシャールクの他にアビシェーク・バッチャン、女優はラニ・ムカジーにプリティー・ジンタと、インド人であれば皆が知っているスーパースターの競演となっています。二組の夫婦のお話で、愛とは何か、結婚とは何かを考えさせられるシリアスな作品です。

 サントラはミリオン・セラーとなり、年間チャートでも2位となる大ヒットとなりました。この中では特に「ミトワ」という曲が大スタンダードとなりました。今でも普通に流れているのではないでしょうか。息が長い大ヒットです。

 ヒンディーで友達という意味を持つ「ミトワ」は、スーフィ・ロックと称されることが多い曲です。スーフィはイスラム教の一派ですけれども、ここではパキスタンの宗教歌謡カッワーリーに影響を受けたロックという程度の意味です。

 伸びやかに歌い上げるのはシャーカット・アマナット・アリさんというパキスタンの歌手で、彼はこの一曲でボリウッドでブレイクしました。この後、数々の作品に引っ張りだこです。甘すぎないストイックな歌唱がインド人のハートを射止めたのでした。

 もう一曲、クラブやディスコ、そしてパーティーの定番となったのが「ホェアズ・ザ・パーティー・トゥナイト」です。キャッチーなディスコ・チューンで、ベタと言えばベタベタですが、そこはかとないボリウッド風味が時代を攪乱させて素敵です。

 さらには「ロックン・ロール・スニエ」だとか「トゥムヒ・デコ・ナ」なども結構な人気を博していまして、本作は大スタンダード・アルバムになっていると言えるでしょう。長らく国民的なスタンダードに恵まれない日本歌謡界から見ると羨ましい限りですね。

 シャンカル・エヘサーン・ロイの三人組はボリウッドの人気音楽プロデューサーです。役割分担はよく分かりませんが、ジョン・マクラフリンさんとも共演しているシャンカル・マハデヴァンさんはボーカリストとしても活躍しています。古典音楽にも造詣が深い歌唱です。

 彼らの作風はボリウッドにあってはとてもモダンです。折衷主義的で、古典とロックやジャズ、トランスやEDMなどをブレンドしたサウンドはほどよく刺激的で、この当時はインド映画界の先兵として、世界と戦っていましたね。

Kabhi Alvida Naa Kehna / Shankar Ehsaan Loy (2006 Sony BMG)