デビュー当時のクイーンは、「ツェッペリン、D・パープルを生んだブリティッシュ・ロック界期待の新星」でした。あるいはバカテクの新人バンドとして話題になりました。後のクイーン物語を知っている私たちからすれば随分とイメージが異なります。

 しかし、フレディー・マーキュリーさんの追悼コンサートでは、ハード・ロック系のバンドばかりが出演していましたから、欧米と日本ではクイーン物語の受け止め方が随分違うのかもしれませんね。

 ちなみに、ギネスのポピュラー音楽百科では、グラム・ロックとハード・ロックの融合と書かれています。このクイーンのデビュー作を聴いていると、華麗なコーラス・ワークがグラマラスな色を濃厚に宿していますから、それもありです。

 クイーンは1970年に結成され、71年からフレディー・マーキュリー、ブライアン・メイ、ジョン・ディーコン、ロジャー・テイラーの不動の四人組となりました。ロンドンのスタジオで録音機材テストのデモ・バンドとして働きながら、スタジオでのデモ・テープ制作を始めます。

 そうして、スタジオの空き時間を使って制作されたアルバムがこのデビュー作です。スタジオ・ワークを駆使したサウンドの出自はそんなところにあったんですね。スタジオ機材とは馴染みが深いわけです。

 さて、このデビュー作ですが、すでに、そのジャケットには大スター然としたフレディーが描かれています。最初から、これくらいの気概でいなければスーパースターにはなれません。そのオーラは他の新人バンドとは違っていました。

 そのオーラで、当時はナンバーワン音楽誌だった「ミュージック・ライフ」の東郷かおる子編集長を虜にし、徐々に日本の若い女の子たちに浸透していきました。東郷さんがライナーで書かれている通り、「何か違う」バンドでした。

 私は彼らを初めて見たのは「炎のロックンロール」だったと思いますが、テレビ番組でした。やはり何か違うオーラを感じたことを覚えています。少なくとも、私の姉は一目見た時からかなり入れ込んでいましたね。

 このデビュー作を聴いてみると、縦横無尽にカラフルな音を奏でるブライアンのギター・オーケストレーションと、フレディー、ブライアン、ロジャーによる重厚なコーラス・ワークがすでに確立していることが分かります。

 ブリティッシュ・ハード・ロックの正統派サウンドに、その二つの要素が加わり、さらに唯一無比のフレディーの粘っこいボーカルが重なってクイーン・サウンドが出来上がっています。ここでは曲調はまだまだハード・ロック一辺倒ではありますが。

 のちのゴージャスなサウンドに比べると、機材の問題もあるのでしょうけれども、まだまだ荒削りな音になっています。しかし、聴けば聴くほど味わい深いクイーンのサウンドはデビュー作にしてすでに完成されています。カッコいいサウンドです。

Queen / Queen (1973 EMI)