オン・ステージ・シリーズも三作目です。このシリーズの弱点はジャケットですね。ザッパ先生のアルバム・ジャケットはどれもこれも面白いのですけれども、このシリーズはいただけません。文字だけ、単なる色違い。面倒くさくなりましたかね。

 第三作も当然二枚組です。最初の一枚はほとんどすべてが84年バンドの演奏です。一方、二枚目の方も80年代のバンドが多いのですが、伝説の東京公演も含むマザーズの演奏が何曲か含まれています。

 すっきり84年バンドのライブにしてもよかったかなと思いますが、そうなると東京公演の音源が発表されないままになったわけですから、これはこれでよかったことにしましょう。それに84年バンドには「ダズ・ユーモア・ビロング・イン・ミュージック」がありますし。

 あのCDはビデオとは別バージョンばかりでしたが、今作にはビデオと同じバージョンの「ハニー・ドント・ユー・ウォント・ア・マン・ライク・ミー?」が収められています。ビデオの宣伝も兼ねているのかもしれませんね。

 冒頭の一曲「シャリーナ」は、息子さんであるドゥイーゼルとの初共演を記録したものです。この時点で彼はわずかに15歳で、ギターを手にしてまだ2年足らずでした。さすがギター魔神の息子だけあって、15歳とは思えないソロをバリバリ弾いています。

 ザッパ先生の親ばかはさらに続き、「チャナ・イン・デ・ブッシュワップ」という曲は、娘の一人ディーヴァが4、5歳の頃にザッパ先生に語ったお話が元になっています。出来上がりはとても小さい女の子が書いたとは思えない卑猥な歌詞になっていますが。

 一枚目の中では「溺れる魔女」だけ、82年バンドの演奏が一部混ざっています。何でもこれは84年バンドが完璧には演奏することができなかったためだと言うことです。確かに複雑な楽曲です。82年バンドにはスティーヴ・ヴァイがいましたからね。

 この他に注目すべきは、レコードでの発表は「ブロードウェイ・ザ・ハード・ウェイ」まで待つことになりましたが、ニクソン大統領を批判する「ディッキーズ・サッチ・アン・アスホール」のウォーターゲート事件渦中の73年バージョンです。筋金入りです。

 そして、第一集にもあったイタリアのパレルモでの暴動も記録されています。「コケイン・ディシジョンズ」では手りゅう弾の破裂する音が収録されていて、緊張が伝わってきます。それがこの間の抜けた感じの曲であるところが何とも皮肉です。

 さらに東京公演からは、ザッパ先生お気に入りのドラマー、テリー・ボジオのドラム・ソロと、「ズート・アリュアーズ」の半分が収録されています。日付が間違っているのが悲しいですが、テリーの凄いドラム・ソロに免じて許しましょう。

 全体にテーマがはっきりしませんが、ご本人の解説を読みながら聴いていると、一曲一曲にエピソードがあって楽しいです。演奏は相変わらず素晴らしいですし。なかなかライブ丸ごとが続かないところが完璧主義のザッパ先生らしいところです。

You Can't Do That on Stage Anymore Vol.3 / Frank Zappa (1989 Ryko)