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ジャケットに描かれた通り、「鮮やかな幻覚の世界」にも見えるウル・デ・リコさんの絵で語られる物語は、大人も惹きつける絵本として根強い人気を誇っています。「虹」は身近な神秘ナンバー1ですからね。
その「虹伝説」の1ページ1ページに高中さんが曲をつけていったのがこの作品です。彼のアルバムとしては7枚目になりますが、この2枚組超大作は紛れもなく彼の代表作と言えます。人気もあり、発表された当時、私の友人が大好きで、毎日のように聴かされていました。
日経新聞の「こころの玉手箱」で高中さんが明かしているところによれば、1979年に「レコーディングと仕事に追われ、嫌気がさしていた」高中さんは、唐突に思い立って、仕事も放り投げて「誰にも知らせずに」グアムに飛びました。
1週間というところが大人ですけれども、とにかく蒸発です。その時、グアム島の友人に勧められたのがこの「虹伝説」の絵本だったそうです。そして、自身が大好きだったプログレッシブ・ロックのコンセプト・アルバム群に触発されて、このアルバムが誕生しました。
「絵本の1ページごとに曲をつけていったら、イエスのようなアルバムができるぞ」と思ったと語っています。狙いは見事に成功して、ギタリストのインストゥルメンタル作品であるにもかかわらず大ヒットしました。
人間、根を詰めるだけではいかん、という見事な教訓話ですね。とりわけ、創作活動に携わるアーティストには遊びが必要です。レコード会社としても1週間の迷惑と引き換えに多大な利益を得たわけですが、担当者としては度量を問われる局面だったことでしょう。
ともかく、この作品は発表後30年以上を経てもなお人気の高いアルバムです。アルバム中の「サンダー・ストーム」は天龍源一郎選手の入場曲でもあります。さらに、続編も登場していますから、高中さんにとっても格別な作品であることには間違いありません。
虹伝説ライブでは、髪を七色に染めて金の衣装に身を包んだ高中さんがステージ中央でギターを弾きまくります。恍惚の表情で奏でられるギター・サウンドはフュージョンと呼ばれるサウンドの典型です。
といいますか、世のフュージョン・ギター観はこのアルバムによって決定づけられたところがなきにしも非ずです。少なくとも私はそうです。ロックしか聴いていなかった私に無理やり聴かせてくれた友人に感謝すべきでしょうね。
とにかく女の子に人気があったことはよく覚えています。「あっ、高中だ。私、好き」と言っていた女の子が多かったんです。これは敵です。流麗なギターソロを聴きながら、これは敵性音楽だ、という点では友人と意見が一致していました。
The Rainbow Goblins / Takanaka Masayoshi (1981 Kitty)