説明不要の大名盤です。表題曲は歴史に残る名曲で、グラミー賞も獲得しましたし、その他の楽曲も捨て曲なしの大力作です。グラミーのアルバム・オブ・ザ・イヤーはフリートウッド・マックの「噂」に譲りましたが、この年の全米チャートはこの2作でほぼ1年が終わりました。

 「ホテル・カリフォルニア」は日本人にとって特別な楽曲です。レコードといえばフィンガー5とピンクレディーくらいしか持っていなかったお友達のユミちゃんも買った曲です。チャンネルが細分化される前の有線チャートで並み居る演歌を抑えて1位になった曲です。

 そこはかとないレゲエのリズムに哀愁漂うドン・ヘンリーの声、ギター少年憧れの的だったドン・フェルダーとジョー・ウォルシュのギター・バトル、演歌に混じっても違和感のないメロディーが一体となって日本人のハートを鷲掴みです。

 こんな洋楽曲は他にありません。とにかく凄い曲です。何でもこの曲はマリブの海岸でドン・フェルダーに降りてきたんだそうです。スパニッシュとレゲエをミックスしたような楽曲はヘンリー・フライ組を虜にし、名高い歌詞を書き上げさせました。

 イノセンスからエクスペリエンスへと移ろう時代を活写し、カリフォルニア幻想の終焉を告げたと言われる歌詞にも自信があったのでしょう、結局、アルバム一枚はこの曲を中心にしたコンセプト・アルバムとなりました。

 アメリカ建国200年に思いを馳せた内容になっていて、冒頭の「ホテル・カリフォルニア」と対をなすのは最後の「ラスト・リゾート」です。アメリカ建国に内在する罪を告発する内容となっていて、これから先のアメリカの行方を思い悩むことになっています。

 重いテーマですね。日本人の私がそのメッセージにリアリティを感じたかと言われれば、そうでもありませんが、なんだか重いメッセージが込められていることは感じられました。真剣に伝えようとしていることが分かることが大事です。

 さて、前作で居場所をなくしたバーニー・レドンはバンドを去り、新たにロック魂あふれるジョー・ウォルシュが参加しました。ソロで成功していた人だけにバンド加入は驚きを持って受け止められました。しかし、この加入は大成功です。まるで違和感なし。

 「ホテル・カリフォルニア」のギター・バトルの最後のハーモニーはジョーのアイデアだということで、フェルダーとジョーの間には同じ方向を向いているギタリストとして健全なライバル関係がありました。明らかにぴったり息が合っています。

 こうなってくると次に心配になるのはランディ・マイズナーです。このアルバムの中でも彼の曲が一曲入っていますが、何となく浮いています。カントリー色が強すぎるんですよね。ジョーの曲のねっとり感と対極にあります。

 いずれにせよ、イーグルスの作品の中でも特異な位置を占めるアルバムです。もはや作者の彼らの手にあまるモンスター・アルバムです。どんなバンドにもピークがありますが、ここは確かに彼らの圧倒的な頂点でした。

Edited on 2021/12/21

Hotel California / Eagles (1976 Asylum)