ジャケットにはアメリカのオカルト映画でよく見かける類のオブジェが描かれています。イーグルスのアルバムはとてもアメリカ的な匂いがします。心底「ならず者」な人たちなのでしょう。アメリカを代表するアーチストはいろいろいますが、大西部代表らしさがあふれています。

 「呪われた夜」はアルバムとして彼ら初の全米1位に輝いたアルバムです。この作品を彼らの最高傑作だという人もいて、なかなか充実したアルバムであることを伺わせてくれます。ビル・シムジクのプロデュースもしっくりしてきました。

 この作品からは、表題曲、そして「いつわりの瞳」、「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」の三曲のトップ10ヒットが生まれています。堂々たる大ヒットぶりです。私も実はこの作品の表題曲からイーグルスを聴き始めました。田舎者の私の耳に届くまでに大ヒットしたわけです。

 表題曲はドン・ヘンリーのボーカルがしっくりくるR&B調の曲です。これまでのイーグルスに比べると重い感じがする歌で、新生イーグルスを代表する曲だと言えるでしょう。「ホテル・カリフォルニア」にそのまま繋がっていく名曲です。

 それから「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」に注目です。自己主張の激しいイーグルスの面々にあって、一人物静かなランディー・マイズナーによる大ヒット曲です。彼は人前で歌いたくないというスーパー・バンドにあるまじき謙虚さでファンを魅了しました。

 この曲などは彼らのステージの中でもハイライトになっていたということで、歌いたくないランディーを一生懸命グレン・フライが説得したという話が涙をそそります。イーグルスらしい哀愁のカントリー路線の名曲です。

 ロック色を強めてきたと言われ、古くからのファンに産業ロックに魂を売ったとまで陰口をたたかれたこの頃のイーグルスですが、ハード・ロックを聴いていた私にしてみれば、この曲に代表される楽曲群はとてもカントリーでした。

 しかし、バンジョーやスティール・ギターを得意とするバーニー・レドンにはこれでも変節に映ったようです。そもそも彼は成功は裏切りだと捉えていたようで、もっとひっそりと音楽をやっていたかった、と、どんどん居場所をなくしていきました。

 この作品には彼の手になるインスト曲「魔術師の旅」が入っていますが、これも他のメンバーには不評だったそうです。確かに浮いています。彼と同じギタリストで新加入メンバーのドン・フェルダーのバリバリ弾きまくるギターの陰に隠れて居心地が悪そうです。

 フェルダーがボーカルをとる「ヴィジョンズ」はかなりハード・ロック指向が鮮明で、これと「魔術師の旅」を並べるとかなり違和感があります。バーニーの置き土産は最後の曲「安らぎによせて」でレーガン大統領の娘さんとの共作でした。話題の多い人です。

 イーグルスが西海岸から飛び出して、世界的なアーティストになったアルバムとして鑑賞したいところですが、彼らの場合、ここまでの作品からのベスト・アルバムがそれこそモンスター・ヒットになっていますから、ベスト盤の方が本流と思ってしまうところが少し残念です。

Edited on 2021/12/21

One of These Nights / Eagles (1975 Asylum)