「ならず者」とはなかなか考えたタイトルです。ちょっと時代がかっているので、西部劇か時代劇にしか使わない言葉です。ヤンキーとかヤクザとか現代に生きるならず者もいるはずですけれども、彼らにはその言葉は使いません。

 デビュー作の成功に気を良くしたのかと思いきや、売れてしまって悩んだそうです。イーグルスの実質的なリーダーのグレン・フライはよく悩む人です。成功することに意外に執着するタイプのようで、後のバンド内の軋轢はほぼ彼を巡るものです。

 二作目を制作するにあたり、グレンとドン・ヘンリーは二人で本格的に曲を書きだしました。そしてアルバムのコンセプトも開拓時代のカウボーイの物語とすることとしました。西部開拓時代のアウトローに自らを重ねています。立場が似ているんだということです。

 ジャケットにはアウトローに扮したバンドのメンバーが写っていて、裏ジャケットでは捕まえられたメンバーが転がされています。なかなかお金をかけた大がかりな仕掛けです。JDサウザーとジャクソン・ブラウンも写っています。楽しそうです。

 このアルバムもグリン・ジョーンズのプロデュースで制作されています。前作ほどの成功を収めることができませんでしたが、それでもそこそこのヒットを記録しています。悩みながらも自信がついてきたということだと思います。

 シングル・カットこそされませんでしたが、このアルバムには彼らの代表曲の一つとなる「ならず者」が収められています。ドン・ヘンリーの歌声も素敵な渋いバラードですが、これはもうリンダ・ロンシュタットのカバーの出来が良すぎます。ドンも脱帽しています。

 日本では平井堅がカバーしていて、これもなかなか素敵な仕上がりです。ドンとは声質が全然違いますが、ソウルは通じるものがあるのでしょう。多くの方にカバーされて生きながらえていくというのは作曲者冥利につきる出来事だと思われます。

 しかし、ドン・ヘンリーは音の仕上がりには不満があるようです。グリンはもともと彼らのボーカル・ハーモニーに惚れてプロデュースを引き受けたわけで、彼らのロック演奏には今一つピンとこなかったというところからして、メンバーは潜在的に不満を抱いていたのでしょう。

 それに、そもそも新人相手ですから、彼らの自由にはさせず、あれこれうるさく口出ししたので、不満がますます募った模様です。具体的な音の不満はボーカルにエコーがかかり過ぎているということと、ドラムの音の録り方だとドンは述べています。

 ジョン・ボーナム仕様の録音方法だったそうで、それはなかなか大変だったでしょう。タイプが全然違います。ただ、バンドはよりロック指向を強めることになっていきます。そんなに後期と大きくサウンドが違うわけではないと思う私などにはどうもピンと来ない話なのですが。

 ともかく、達者な音作りだと思います。グリン・ジョーンズのもとで見事な作品に仕上がっていると思いますから、軋轢はありつつもこれはこれでよかったのでしょう。じわじわと1970年代を通して聴き継がれていきましたから。

Edited on 2021/12/21

Desperado / Eagles (1973 Asylum)