イーグルスはウエスト・コーストを代表するバンドであり、アメリカを代表するバンドでもあります。その中心人物となるドン・ヘンリーはテキサス、グレン・フライはシカゴ近辺の出身ですからウエスト・コーストとは関係ありませんが、だからこそ代表なんでしょうね。

 グレンはデビュー前にはJDサウザーと同居していましたし、その階下にはジャクソン・ブラウンが住んでいたそうです。そして、ドン・ヘンリーとともにリンダ・ロンシュタットのバック・バンドをやっていて、さらにジェームス・テイラーとも親交がありました。

 まさにウエスト・コースト・オールスターズです。こうなるとサイケデリック時代の後のウエスト・コースト・サウンドの代表とされても全く問題なさそうです。というか、この一連の人脈が奏でた音楽がウエスト・コースト・サウンドだといえるのでしょう。

 グレンとドンの二人はリンダの元を旅立ったわけですが、リンダは怒るどころか、バンドやるならこの人、とバーニー・レドンを紹介したそうですから器が大きいです。さすがです。彼ら三人はベースにランディ・マイズナーを加えてここにイーグルスが誕生しました。

 ジャクソン・ブラウンの紹介でデヴィッド・ゲフィンとレコード契約を結ぶと、ブリティッシュ・ロックに憧れがあったのでしょう、彼らはプロデューサーにストーンズやレッド・ツェッペリンのエンジニアとして有名だったグリン・ジョーンズを希望します。

 グリンは最初は乗り気ではなかったそうで、断ろうかと思っていたけれども、四人のボーカル・ハーモニーを聴いてやる気になったと語っています。デヴィッドといい、グリンといい、後にいろいろとごたごたの種になるのですけれども、ここまではよかったんですね。

 ロンドンで制作されたファースト・アルバムがこれです。ジャケットはヨシュア・ツリーですよ。実際に撮影時に鷲が飛んだそうですから、将来の大成功が約束されていたのでしょうね。明け方、ペヨーテを飲んでヘロヘロになりながらの撮影だったこともあれこれ暗示しています。

 サウンドの方は私たちが思い浮かべるところのウエスト・コースト・サウンドです。何といっても「テイク・イット・イージー」ですね。ジャクソン・ブラウンの作った曲にグレンが歌詞をつけたということで、まことに爽やかなサウンド、ウエスト・コースト・サウンドの代名詞です。

 ボーカル・ハーモニーに加えて、バーニーのバンジョーが活躍するのもポイントが高いです。しかし、続く「魔女のささやき」がすでにドン・ヘンリーのボーカルが中心となったなかなかに重いナンバーです。ウエスト・コースト=爽やかというのも思い込みだけなんですかね。

 イーグルスの強みは全員がボーカルをとれることにありました。それにこの作品ではまだフライ・ヘンリーのコンビは成立しておらず、全員が作曲もしていました。それぞれが持ち味を発揮している充実のデビュー作と言ってよいでしょう。

 チャート・アクションはさほど派手ではありませんでしたが、とりあえずは大成功ですし、彼らの場合、後に「グレーテスト・ヒット」が史上1位の売り上げを記録しますから、このアルバムの中のシングル曲は各家庭に常備されているはずです。

 ウエスト・コーストと言えばイーグルスとされるのもこのアルバムを聴けばよく分かります。カントリーとロックをうまい具合に溶け合わせたサウンドはオールスターズの面々の活躍とともに世界に冠たるウエスト・コースト・サウンドを確立しました。

Edited on 2021/12/21

Eagles / Eagles (1972 Asylum)