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ダリル・ホールさんは、自分をシリアスなアーティストだと思われたがっていた節があります。稀代のヒットメーカーで、売れに売れていましたが、世間は売れるアーティストを軽く見る傾向があります。デュラン・デュランなどもそうでしたね。それが不満だったようです。
ただ、彼らの音楽はブルー・アイド・ソウルそのものです。ソウル・ミュージックのアーティストは、もともとシリアスなアーティストとは縁遠い存在です。音楽だけでファンも満足でしたから、余計な尾ひれは必要ないというわけです。
ホール&オーツの姿で一番印象に残っているのは、ライブ・エイドで彼ら憧れのテンプテーションズのメンバーとともに横一列で、みんなで糸を巻き巻きしている姿です。心の底から楽しそうで、見ているこちらまで本当に楽しくなったものです。
シリアスなんて糞くらえじゃないですかね。私には彼らはライブ・エイドの姿だけで十分です。あれで一気に見直しましたよ。音楽バカでいいじゃないですか。その後になって、彼らの一連のヒット曲を振り返ってみてようやくその真価が分かった気がしました。
この作品は彼らのベスト・アルバムです。ほとんどがトップ10ヒットで、1位に輝いた曲も5曲あります。本当に勢いがありました。私の年代の方で、洋楽を聴いていた人ならば、特にファンじゃなくても全曲耳になじみがあると思います。
彼らのサウンドはソウルそのものです。黒い黒い。それもシリアスな黒さではなくて、モータウンやフィリーやスタックスなど黒人音楽のメインストリームを一緒くたにして、さらに80年代風に味付けした感じ。どす黒くない軽い黒さなんですね。
それでも、RCA移籍以前のラテン・ファンク風味の「サラ・スマイル」などは黒すぎて、当時の私には馴染めない部分もあったのですが、「キッス・オン・マイ・リスト」からはもう怒涛の快進撃でした。出す曲出す曲大ヒットでしたしね。
当時の黒人音楽と言えば、ディスコ・ミュージックのはずなんですが、彼らの場合はディスコには行かないんですね。あまり行ったことないので、本当はディスコでかかっていたのかもしれませんけれども、典型的なディスコ・サウンドではありません。
そこが彼らのいいところです。決して計算して売れ筋を狙っているわけではなくて、好きで好きでしょうがないソウルを解釈して演奏したらヒットしたというように思えるところがいいんですよね。
80年代、というかベストヒットUSAを代表するアーティストだけに、全盛期の勢いは本当に素晴らしい。その勢いのすべてを余すことなく収めたこのアルバムが悪かろうはずがありません。これこそ彼らの最高傑作でしょう。
Rock'n Soul Part 1 / Daryl Hall & John Oates (1983 RCA)
糸をまきまき