中高年にはバルチック艦隊で、少し若目の方には把瑠都関で有名なバルト海に面したバルト三国の一つ、エストニア生まれのバンドです。そもそも何語をしゃべっているのかさえ知りませんでしたが、エストニア語でした。

 エストニアには熱いプログレッシブ・ロック・シーンが存在するのだそうです。ストレンジ・デイズのサイトによれば、「ルーシャやイン・スペ、カセケ、メッシュ、スヴェン・グランバーグ、VSPプロジェクト」、さらに「パントクラトール、インドレク・パッテ、X‒パンダ」など数多くの名前が挙がっています。結構な盛り上がりです。全く見当もつきませんが。

 ウラプク・ウレイもそんなバンドの一つです。エストニアの内陸部のタルトゥ県出身で、2004年以降、いろんな編成で演奏しているとのことです。2000年代後半からエストニアのオルタナ・ロック界では、「タルトゥ・ネオフュージョン」と呼ばれるジャズ・ロックが流行しているんだそうです。彼らはその代表格だということです。

 エストニアの首都タリンから発信されているタリン・ミュージック・ウィークのサイトは、彼らの音楽を、さまざまなスタイルの音楽がフュージョンしたものとして、より冒険的でオープン・マインドで実験的だと高く評価しています。

 彼らは幾多の変遷を経ていて、編成もさまざまだったようですが、この作品は、7人組で、それぞれギター、キーボード、ドラム、ベース、バリトン・サックス、トロンボーン、トランペットを担当しています。

 このアルバムは2012年5月からダウンロード販売されているデビュー作品です。それをイタリアの注目レーベルであるアルトロックから2014年になって初めてCDとしてリリースしたというものです。日本盤まで出たんですね。凄いことです。

 一言で言えばジャズ・ロック、純正ジャズ・ロックです。フュージョンと言ってもよいのですけれども、シンセの使い方がプログレッシブ・ロック的なので、ロックという言葉をどうしても使いたい。そんな気にさせます。

 帯の煽り文句は、新しいところではノルウェーのジャガ・ジャジストのグルーヴを、古いところではカンタベリー系のキャッチーな屈折感とレコメン系の複雑コンポジションを持ち出しています。カンタベリーはソフト・マシーンやゴングのジャズ・ロック、レコメン系ではヘンリー・カウなどを想起したということでしょう。

 要するに70年代的な正統派ジャズ・ロックを聴かせるバンドなんです。もちろん現在進行形のバンドですから、クラブ系サウンドのエッセンスも取り入れていますし、全体から漂う軽みのあるユーモラスな感覚が現代を感じさせてくれます。

 フランク・ザッパ先生の名前が引き合いに出されることも多々あります。皆でワイワイそんなことを議論するのは楽しいことですが、若干バンドには気の毒な気もします。変拍子を多用した何とも魅力的なジャズ・ロックですから、誰に似ているとか考え過ぎずに、昔に戻って楽しみましょう。

Kolk Saab Korda / Wrupk Urei (2012 Altrock)