ホラー映画といいますか、オカルト映画の金字塔です。物価上昇を勘案すると歴代興行収入ベスト10に入るという大ヒットですし、ここ日本でもライナーノーツによれば30億円と言う洋画の新記録を打ち立てました。

 公開当時は社会現象にまでなりました。私ももちろん映画館に足を運びましたが、怖かったかと聞かれれば、正直、大して怖くありませんでした。特に悪魔が正体を現してからは。やはり文化の違いはいかんともしがたい。私には日本の怪談の方が100倍怖いです。

 しかし、よく出来た映画でした。特にこのジャケットに描かれているシーンは鳥肌が立つほど素敵でした。これは悪魔祓いをするエクソシストが、リンダ・ブレアの家を初めて訪ねるシーンです。背景に「チューブラー・ベルズ」がなっていました...よね?

 映画の感想はさておき、サントラです。このサントラは凄いことになっています。「エクソシスト」と言えば、マイク・オールドフィールドさんの「チューブラー・ベルズ」があまりにも有名です。オリジナル盤は英米でトップ3のヒットとなったばかりではなく、エディットされて「エクソシストのテーマ」として発売されたEP盤ですら全米トップ10ヒットです。

 しかし、それだけではありません。このサントラには、クシシュトフ・ペンデレッキ、アントン・ヴェーベルン、ジョージ・クラム、ハンス・ヴェルナー・ヘンツェという錚々たる現代音楽の作曲家たちによる楽曲が収められています。

 もともとは「燃えよドラゴン」のラロ・シフリンさんが音楽を担当するはずでしたが、出来上がりが監督の気に入らず、結局、現代音楽曲を使用することになったそうです。加えてサントラではほんの一部にジャック・ニッチェさん他によるオリジナルが入っています。

 まるでこの映画のために書き下ろした作品ではないかと思われるくらいに映画にぴったりですが、「チューブラー・ベルズ」を含めてそうではないところが驚きです。無調無旋律の現代音楽はホラー映画に最適だと言うことがここに証明されています。

 弦楽曲が多いですけれども、普通の弦楽器の使い方ではないと思わせる多彩な音が出てきますし、弦楽器特有の節回しはほとんど出てきません。まるでフィルムを見ながら即興で楽器をいじめているように聞こえます。

 大たい曲の切れ目が分かりません。違う作曲家、違う演奏家、違う楽器編成であるにも関わらず、見事なまでの統一感がサントラ盤から漂ってくるところが面白いです。むしろマイクの曲が異質に聞こえるほどです。

 現代音楽のコンピ盤として鑑賞に耐えうる見事な作品だと思います。私は特にペンデレッキの作品が好きです。何たってカッコいいです。

 ところでこのサントラ、当初はマイクのオリジナル音源が入っているものはアメリカ国内でしか発売されておらず、海外では別音源だったそうです。しかし、96年に日本で初めて米国内仕様バージョンによるCD化が行われました。さすが日本。

The Exorcist / Original Soundtrack (1974 WEA)