スレイドは、グラム・ロックのバンドで、パンクの到来とともに前線から追いやられたバンドというところが通り相場です。ですが、私にはベイ・シティ・ローラーズ登場以前のチャート・バンドだとの認識が強いです。

 私が洋楽に目覚めたちょうどその頃、スレイドは全盛期を迎えていました。実に思い出深いものがあります。デヴィッド・ボウイもマーク・ボランもすでに大スターで遠い存在でしたが、このスレイドを始めとするキラキラ・ポップな連中、ジョーディー、マッド、スウィートなどの一群の存在はとても眩しかったです。

 ところが、そこにベイ・シティ・ローラーズ旋風が押し寄せます。雨後の筍のように同じようなアイドル・グループがデビューしました。中ではバスターくらいしか名前を覚えていませんが、多くのバンドが一様にかわいらしい格好をしていました。こちらはこちらで、どうしようもなく子どもに見えました。この間、わずかに2、3年。しかし、中学生の2、3年は大きいです。

 個人史的にはそうですが、一般には、スレイドはグラム・ロックのバンドです。そして、のちにニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘビー・メタルの元祖として再評価されていきます。ブルースの影響を受けた英国のハード・ロックから、ブルース臭を抜いてストレートに展開したところが彼らの功績だったと思います。

 スレイドは、元アニマルズで、ジミ・ヘンドリックスを発掘した有名人チャス・チャンドラーに見いだされてヒット・メイカーになった人たちです。キャッチーな楽曲をハード・ロックばりばりの演奏で歌いまくる彼らはティーンの心を鷲掴みしたのでした。

 この作品は、スレイドがシングル・ヒットを連発していた時期に発売されたオリジナル・アルバムです。彼らとして初の全英1位を記録した記念すべき一枚です。私は、長い間、この作品をベスト盤かと思っていたのですが、違います。

 キャッチーな曲が続きますし、大ヒット曲てんこ盛りですし、ベスト盤としてもあまり違和感がありませんから、いかに彼らの勢いがあったか分かるというものです。しかも、この再発盤にはクワイエット・ライオットが大ヒットさせた 「カモン!!」がボーナスで入っています。あえてベスト盤仕様になっていますから、もともと万人が認めるベスト盤ぶりだったわけです。

 キャッチーなメロディを、ノディー・ホールダーさんのヘビメタ声でのハイトーン・シャウトが歌い、前髪を短くした金髪ロン毛という変な髪形をしたデイブ・ヒルのブギウギ・ギターが冴え渡ります。ジャニス・ジョプリンのカバーもカッコいいことこの上ありません。

 些かどころか、かなりいかがわしい人たちですけれども。当時、中学生だった私はテレビで彼らの映像を見て感動したものです。おお、こいつらあほや、と皆思ったはずです。結構シリアスだった当事の洋楽界において一服の清涼剤、夢中になったものでした。やっぱりロックはあほじゃなければいけません。

 「グッバイ・ジェーン」、「クレイジー・ママ」はもちろんのこと、捨て曲なしです。胸の底がすかっとします。

Slayed? / Slade (1972 Polydor)