若いですねえ。若い若い。このアルバムを発表した当時、ショーン・キングストン君はわずかに17歳でした。声や歌い方はとても17歳とは思えないですけれども、肥満体を揺さぶって溌剌と歌うショーン君の姿はまるで子どもでした。

 この作品は、もちろんショーン君のデビュー作にあたります。シングル・カットされた「ビューティフル・ガール」は爆発的なヒットとなり、見事に全米チャートを制覇しました。アルバムもそこまでは行きませんでしたが、堂々トップ10に入るヒットを記録しています。

 ジャケットにジャマイカの国旗があしらってあるように、マイアミ生まれながら、ジャマイカの首都キングストンに育った彼らしく、レゲエを基調にした見事な作品となっています。スカッとした見事なレゲエです。

 しかし、もちろん現代的に実にバラエティーに富んだ構成となっています。イントロではラップでの自己紹介をかました後、間髪を入れずにエミネムばりのどすの利いたヒップ・ホップ曲が続きます。

 このままいくのかと思いきや、次はまるでバック・ストリート・ボーイズのようなマイナー調の素敵なメロディーが流れてきます。この曲「テイク・ユー・ゼア」はとても素晴らしい。哀愁を帯びた切ない歌声に若い日の恋の思い出が...。

 そして、サンプリングもとても的を射ていて素敵です。ここでは、まず、レッド・ツェッペリンがレゲエに挑戦した曲「ディジャ・メイク・ハー」が登場します。もともとレゲエですから相性はよくて、とてもハッピーなカバーとなっています。

 大ヒット曲「ビューティフル・ガール」では、ベン・E・キングの超名曲「スタンド・バイ・ミー」をもろにサンプリングしたトラックにのせて本領発揮のほのぼの、べちゃべちゃしたボーカルがゆったりと乗っかります。こんな手があったのねえと感心すること しきりです。

 さらに、フィル・コリンズの「夜の囁き」を大々的にフィーチャーした曲もあります。この曲がヒットした頃、彼はまだ生まれていません。渋い趣味ですねえ。AORの雰囲気もあって、これもかなり不思議な曲です。

 日本盤にはボーナス・トラックとして、彼の出世作であるストリート・シングル(!)「カラーズ(2007)」のレゲエ・ミックスと、「ビューティフル・ガール」のインストが入っています。前者はばりばりのヒップ・ホップですが、後者の力の抜け方が凄いです。

 こういう作品の場合、プロデューサーの役割は極めて大きいのでしょう。本作は大物プロデューサーのジョナサン・ロテムが全面的にプロデュースしています。バッキングは全て彼、楽曲のクレジットにも全部入っています。昔の感覚だと二人の名前がクレジットされてもいいくらいです。

 ともかく、売れ線のサウンドに乗せて若さで押しまくっているのですが、その後、伸び悩んでいるようなのが心配です。

Sean Kingston / Sean Kingston (2007 Beluga Heights)