インディーズの風景も変わりました。プロでなくとも立派な音が作れる時代になりましたし、発表も流通も容易になり、インディーズとしての無用な気負いもなくなりました。昔に比べればまことに良い時代になったものです。と、年寄り臭い感想をまず覚えました。

 レンダは、公式サイトによれば、「歌.ハコと電子楽器.ヒコによる2人組無国籍ゴスユニット」です。ハコさんが女性、ヒコさんが男性の男女デュオです。結成は2005年で、そのサウンドは、「抒情系ヒステリック。しっとりと激しくチープな程に荘厳に。」と自己紹介されています。

 ツイッターの自己紹介には、「半端ヲタ。お散歩とレトロと不思議と雑貨とマンガ好きです。乱歩/夢野久作/丸尾末広/山本タカト/横尾忠則/モロー/萩尾望都/ウテナ/ヒカ碁等。仮装もたまにします。二階堂のCMが好きだ。」と書いてあります。

 私も江戸川乱歩と夢野久作は全集を読みましたし、丸尾末広の漫画も若い頃には愛読していました。萩尾望都も好きですし、横尾忠則は常に気になる人でした。印象派にあえて背を向けるモローもカッコいいと思いましたし、ヒカ碁も読んでいました。

 要するにレンダの世界観にはとても馴染みがあります。あまり馴染みがなかった少女革命ウテナと平成の浮世絵師山本タカトをご紹介頂き、ありがとうございました。名前は聞いていましたが、今回改めてネットで調べてみて大変興味がわきました。二階堂のCMも好きです。

 ここまで申し上げておいて、ジャケットを見ると、イラストもとても素敵だと思います。林静一と宇野亜喜良と名前が思い出せないあの人の流れにあるような素敵な作品です。夜舟さんとおっしゃる方で、サイトには思わず見とれる作品がてんこ盛りです。

 肝心のサウンドの方はどうかと申しますと、これはなかなか渋いです。脈絡もなく、新日本紀行を思い出しましたが、どうやら日本の民族的な深みを感じさせるサウンドがそうさせたのだと思います。

 ゴス・ユニットとのことですが、確かにブックレットの写真を見ると、特にヒコさんのメイクはまさにゴシックです。しかし、サウンドは特にゴスというわけではありません。西洋的なゴシック・イメージではなく、むしろ、とてもアジア風味の無国籍サウンドです。

 サウンドに漂う無国籍観は、日本を掘り下げていったところで出会った汎アジア的な普遍性というものを感じます。そして、歌詞は文語的な装いを持つ日本語ですが、不自然ではなくて、とても自然に彼らの世界観を表現しています。

 ハコさんとヒコさんのそれぞれの世界観が微妙に違うところも面白いです。ハコさんの歌詞の方がより自分の感覚に寄り添っていて、ヒコさんの方はより虚構の世界的です。サウンドもそれぞれ微妙に異なり、二人はいいバランスなんだなと感心します。

 ブログを覗くと、ハコさんはとても常識的な女性で、こういうバンドをやっていそうに見えないところがいいです。万古不易な世界観を艶のあるボーカルと我が道をいくサウンドで表現する大人なバンドだと思いました。カッコいいです。

幼き頃の夢の影、瞼に未だ消えず / レンダ (2014 Club Lunatica)