80年代のポップ・アイコンだったボーイ・ジョージの何と18年ぶりの作品が発表されました。帯の表現を借りると、「不屈のアイコンが還ってきた。再び王座に就くにふさわしい風格で」という堂々たる力作です。

 日本盤は通常よりも厚いプラケに収められています。それだけ解説が充実しているということです。あちらこちらでインタビュー記事も目にいたしますし、彼のような一時代を画したスターが久しぶりに動き出すと皆が黙っておられなくなるようです。

 ジャケットの写真を見ると昔の面影はあるのですけれども、やはり時は流れていて、何だか少し寂しくなります。いろいろと世間を騒がせた人だけに、枯れてしまったなあとしみじみします。しかし、英誌インディペンデントは「こんなに楽しそうなジョージは何年ぶりだろう」と書いていますから、私の知らない間にいろんなことがあったんでしょう。

 ボーイ・ジョージは昔から曲作りには定評のある人でした。単なる流行りもののポップスには終わらない永遠の名曲を数多く残している人です。その曲作りの技はこの作品でも遺憾なく発揮されていて、どの曲もしっかりとしたいい曲になっています。

 大人のロックという言い方が似合うサウンドです。本人は「やっぱり根っこは70年代なんだよ」と語っています。「作り手が本気で本物で、見た目にも最高のこだわりを持った人たちが多かった」70年代です。

 確かに70年代のアーティストが大人になって作った作品、と言う形容が当たっている気がします。「成長、というもので満ちあふれているアルバム」だと本人が語る通り、長い長い時にもまれてたどり着いた先にある音楽です。

 全体にレゲエを基調としていたダンディなサウンドがてんこ盛りです。歌詞も大人ですし、サウンドも妙に盛り上がることなく、実に枯れた大人なサウンドです。本人が大いに語っているところも大人のロックです。

 ♪私は夢を見た♪と日本語で語りで始まる曲もあれば、オノ・ヨーコの曲のカバーもあります。さらにヨーコさんへの入れ込みようは凄くて、♪愛はビートルズよりもストーンズよりも大きいけれども、ヨーコほどではない♪なんて歌っています。日本人として喜びましょう。

 というわけで、とても質の高い良質の大人のロックです。ここのところDJとして、ダンス・トラックばかりを作っていたボーイ・ジョージが正面から自分と向き合って作り上げたアルバムだということはよく分かります。

 しかし、需要はあるんでしょうか。英国のヒット・チャートでは33位が最高でした。ライブは盛況なようですし、ここ日本でも大きく取り上げられていますけれども、聴いていて戸惑いを隠せません。

 一言で言うと元気がない。もう少しはっちゃけた姿を見てみたかった。枯れた姿はまだ早いのではないでしょうか。(引用はCDジャーナル14年4月号)

This Is What I Do / Boy George (2014 Very Me)