キャプテン・ビヨンドはスペース感覚あふれるハードなロックで日本の若者の心を虜にしたバンドです。本国であるアメリカやイギリスよりも日本や北欧での方が人気があるように思います。そこがこのバンドの面白いところです。

 ディープ・パープル、アイアン・バタフライ、ジョニー・ウィンター・アンドという三つのバンドのメンバーによって結成されたバンドでしたから、スーパー・グループと言われたそうです。当時はクリームに始まる離合集散の激しい時代でした。ロック界も狭かったということでしょう。

 面白いのはこのバンドが契約したのがカプリコーン・レコードだというところです。カプリコーンと言えば、オールマン・ブラザーズ・バンドを中心にサザン・ロックで有名でした。ドラムのボビー・コルドウェルがオールマンズと一緒にプレイしていたことから、デュアン・オールマンの推薦でレーベル契約に行きついたということです。

 デュアンはこのバンドの音を聴いていたのでしょうか。とてもカプリコーンのレーベル・カラーに合うとは言い難いです。全く無しというわけでもありませんが、かなり遠いと思います。キャプテン・ビヨンドはサイケデリック風味の強いプログレッシブ・ロック的なハード・ロックなんです。当時流行った言葉で言えばアート・ロックです。

 この作品は、彼らのデビュー作です。ドラムのボビーとボーカルの元ディープ・パープル、ロッド・エヴァンスの二人が全曲を手掛けており、彼らが中心だったことが分かります。ところがこの二人が揃っているのはこの作品だけですから、これは特異な作品ということです。

 バンドのコンセプトはいろいろと話し合われたのでしょう、渾身の大作となっています。ただ、アイアン・バタフライや第一期ディープ・パープルのサウンドの延長線上にあるようにも思えます。こういう方向を続けたい彼らと次に進みたいバンドとの対立があったんでしょうね。

 複雑な構成のハード・ロックな楽曲で、LPの両面はそれぞれ一つながりになっています。プログレ的展開です。スペース・オペラ的でもあり、サイケなギターも活躍すれば、実力に定評あるボビーさんのドラミングも目立っています。

 ところが、アメリカではカプリコーンがやっぱり彼らの音楽を理解できずにあまり売る努力をせず、結局大して売れませんでした。イギリスでは売れてもよさそうではありますが、ロッドのエルビスばりのボーカル・スタイルやサザン・ロックとまではいかないものの、大陸的な明るさが受けなかったもののようです。

 しかし、ここ日本では大いに人気を博したようです。確かに何度も何度も再発されていますし、ここにこうして紙ジャケでホログラム的なキラキラ・ジャケットが復刻されてもいます。日本は頑なにプログレを守ってきた国ですから、彼らも道を貫いて欲しかった。

 そこがスーパー・グループの宿命です。一回成功した人たちは粘りがありませんね。力強いサウンドで見どころも多いのに、時代の波に飲み込まれてしまったのは残念です。地道に続けていれば陽の目を見たでしょうに。

Captain Beyond / Captain Beyond (1972 Capricorn)