お酒をほとんど飲まなくなってからしばらく経ちますが、最近、コーヒーの味に目覚めました。とはいえ、品種まで聞き分けができるところまではとても至らず、偉そうに語れるまでにはまだまだ時間がかかりそうです。

 マウンテン・モカ・キリマンジャロは、代表的なコーヒー豆を並べた名前の日本産ファンク・バンドです。コーヒーと言えばルンバではないか、ファンクとは関係ないのではないか、と思わないではありませんね。

 マウンテンはブルーマウンテンとするとジャマイカですし、モカはイエメンかエチオピア、キリマンジャロはタンザニアと、これまたファンクとは遠くはないけれども近くもなさそうな国ばかりです。

 このバンドは、名前が長いので通称の一つモカキリで呼ばせていただきますが、2003年頃に結成され、渋谷を中心に活躍してきたバンドです。自称「埼玉の粗大ごみ」。2008年にはPヴァインからアルバムをリリースすると大いに話題を集めて、フジロックに異例の緊急出演をしたと公式サイトにあります。

 その後、業界内で話題が沸騰したそうで、映画に楽曲を提供したり、いろんなアーティストとコラボを行ったりしているうちに、英国の名門レーベルであるジャズマンから日本人初リリースを成し遂げました。

 さらに今やファンクの聖地と化したオーストラリアでもツアーを行うなど、精力的に活動を続けています。この作品は、そんな彼らの4枚目のアルバムです。今回は全曲日本語の題名がついていまして、これは彼らとしては初めてだということです。

 モカキリは二管編成にオルガン入りの六人組でインストゥルメンタル・バンドです。今作品でも叫び声の他には、♪お前たち鉄蓋を設置するんだ♪という言葉が入るのみです。とてもストイックですね。

 サウンドはファンクです。もうファンクという言葉しか浮かびません。クラブ・ミュージック的なデジタル・サウンドではなく、アナログ・ファンクです。70年代ないしは60年代のファンクの香りが濃厚で、そこが返って新鮮です。

 今ならば、もっと奥行きと広がりのある録音になるのでしょうけれども、あえて昔風に録音してあるように思えるほどです。ファンキーなオルガンの音も懐かしいですし、ドラムとベースもドラムンベース的な音とは程遠い昔風です。

 ソウル、R&Bと並べて置けるザ・ファンクです。ファンク道まっしぐらのサウンドはとても潔くて、流しておくといつまでも聴いていられます。迫力のある演奏を聴いていると、ライブを見てみたいと思わせます。

 ファンクの世界は今や地球のいたるところに広がっています。ここ日本にもこういうバンドがあるというのは素敵なことです。

壱弐参四伍録 / Mountain Mocha Kilimanjaro (2014 PVine)