最初に申し上げておきますが、「すてきなサンデー」は本当にいい曲です。ポップス史上に残る名曲だと思っています。1976年5月の発表ですからもう随分前のことです。しかし、今でも時々流れて来るほどの名曲なんです。

 バスターはポスト・ベイ・シティ・ローラーズの代表格として日本では高い人気を誇りました。何と武道館を満員にしているんです。それに海外アーティストなのに、ラジオでのレギュラー番組まで持っていました。

 ところが、英国では「すてきなサンデー」が少しヒットしただけで、さっぱり売れていなかったようです。当時は売れているものだとばかり思っていましたが、そうでもなかったんですね。彼我の違いを感じます。

 日本ではベイ・シティ・ローラーズ旋風が吹き荒れた後の二匹目のドジョウを狙った一群のバンドの中の代表格でした。しかし、イギリスではリヴァプール近郊出身ということもあって、ビートルズと関連した売り出し方だったそうです。

 ローラーズ・フォロワーのイメージが有効だったかどうかによる売れ方の差でしょう。アイドルに対して底堅い需要のある日本と、時々爆発的にアイドル需要が高まるものの、なかなか裾野が広がらないイギリスとの差です。

 ともあれ、イギリスでもバスターはプロダクションの意向の強いアイドル・プロモーションがされています。そうでなければこんな制服のような服を着ないでしょう。そして、ソング・ライティングはおおむねロニー・スコットとスティーブ・ウルフのチームが担当しています。

 このチームはボニー・タイラーの「イッツ・ア・ハート・エイク」を生み出すことになるチームで、70年代の甘いポップスに大いに強みを発揮します。しかし、バスターの面々はちゃんと演奏はしています。メンバー作曲のインスト曲「デイ・ブレイク」では見事なギター・ソロを聴かせます。

 曲が70年代の典型的な甘く切なく美しいポップスばかりなので、ローラーズ・フォロワーと言っても間違いではありませんが、冒頭の「ウィ・ラブ・ガールズ」のコーラス・ワークを聴くと、ビーチ・ボーイズの弟子であると言った方がよいことがわかります。

 メンバーは中学時代にバンドを結成していますが、その時にビーチ・ボーイズの「スループ・ジョンB」を随分気に入ってコピーしていたといいますから筋金入りです。このコーラスが全体を貫いていて、彼らの魅力の大きな部分を形成しています。

 そして、いくつかの曲ではボートラでロック・ヴァージョンが収録されていて、結構なロック志向であることも分かります。プロによるポップスを精一杯自分たちのものにしようという気概が感じられます。

 バブルガム・ポップス、ティーネイジ・ポップスとして暖かい目で見守りたい作品です。「すてきなサンデー」の始まりにどうぞ。

Buster / Buster (1977 RCA)