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少年はジャケットをデザインしたマーク・ウィルキンソンの隣に住んでいたロバート君ということで、ミュージック・ビデオにも出演していますが、よりによってダミアン少年を模したモデルだとは思わなかったことでしょう。
マリリオンは元々はシルマリリオンという名前でした。これはトールキンのファンタジーの題名ですね。それを縮めてマリリオンとしたことからも伺える通り、ファンタジー系のプログレ・バンドです。
パンクの人々はもっぱらプログレを目の敵にしていましたから、その後のニュー・ウェイブ時代に何でもありとなってからもプログレだけは不遇な目にあっていました。しかし、80年代半ば頃に、英国ではプログレ・リヴァイヴァル的な動きが少し盛り返した時期がありました。
マリリオンはその代表的なバンドで、もろにプログレなサウンドはある意味でかえって新鮮に映ったのだと思います。この作品はそんな彼らの3作目にして、全英一位を獲得した彼らの代表作です。
全体が一大コンセプト・アルバムとなっていて、全10曲ですけれども、LPでA面とB面との境に相当するところ以外には曲の切れ目がありません。さらに、うち3曲は組曲形式になっていて副題がついています。何ともプログレですね。
少年時代に思いを馳せたコンセプトで、ミュージカル的に物事が進行し、とてもドラマチックなスケールの大きなサウンドが展開されていきます。ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラムスの5人組から典型的なプログレ・サウンドが生まれてくるわけです。
この時期の彼らの不幸なところは、このサウンドを聴くと、かなり多くの人がジェネシスを思い浮かべるところでしょう。私はさほどジェネシスに入れ込んだわけではありませんが、それでもまずジェネシスの名前が浮かびました。
ちゃんと聴いてみるとさほど似ているわけではないような気もするのですけれども、第一印象は拭えません。プログレの様式美というものが仇となったということでしょう。
この作品の制作にあたってなかなかプロデューサーが決まらなかったそうです。彼らのコンセプトを説明すると、売れそうにないからという理由で次々と断られたということです。そういう扱いがなされていたわけですね。ジェネシスですらポップに変身したのに、ということでしょう。
ところがどっこい、先ほども申しました通り、このアルバムは全英1位になりました。当時ですらそこまで上ったわけですから、プログレへの偏見が消えた今となっては、緻密で見事なサウンドはより高い評価を得てもよさそうです。
マリリオンはまだ現役。活躍を祈ります。
Misplaced Childhood / Marillion (1985 EMI)