テレビのコマーシャルで「僕のサラダ・ガール」を聴いた時は驚きました。というか少し違いますね。「僕のサラダ・ガール」を歌っているのが日本のバンドだと聴いた時に心底驚いたんです。絶対、洋楽だと思っていたのに、という驚きです。

 ゴダイゴが手掛けるCMソングの数々は、当時の日本人が考える洋楽そのものでした。一般化してしまいましたが、当時高校生だった私が考えるところの洋楽だったんです。ですからそれを日本人がやっていると聞いて驚いたわけです。

 当時はまだ洋楽と邦楽の境目ははっきりしていて、ことロックに関しては完全に洋楽至上主義でした。そんな中で軽やかにゴダイゴが登場しました。リズム・セクションがアメリカ人だと聞いて少し安心した人は私の他にも多かったんじゃないでしょうか。

 この作品はゴダイゴがCMのために制作した音楽を集大成したものです。一般にCMソングは権利関係が複雑なために、なかなかこういうアルバムを制作することは容易ではなかったようです。それが、77年の大瀧詠一さんによる「ナイアガラCMスペシャル」の大成功によって、この作品が生まれたということです。

 CMからヒットが生まれるようになったのは、ちょうどこの頃からですね。ただ、CMとタイアップして曲をプロモートしていくということはまだ一般的ではありませんでした。ですから、純粋にCMのために音楽を制作したということです。

 ほんの短いバージョンもあるので、その間に耳を奪う必要があります。サビが勝負です。それに商品名を連呼する必要もあるので、歌詞にも制約がある。そんな裏方的な職人仕事を見事なクォリティーで仕上げるということは凄いことであります。

 この作品に収録された楽曲の数々はいずれも耳になじんだ曲ばかりでしたけれども、CMで耳にしていたので、こうして改めてアルバム・バージョンが収録されるととても新鮮に感じたものです。

 演奏の密度は濃いですし、編曲も見事にロックしていました。ミッキー吉野さんのキーボード、浅野さんのギター。どちらも聴きどころ満載ですし、スティーブとトミーのリズム・セクションはやはりノリが違います。

 私は「僕のサラダ・ガール」や「ザ・モーニング・アフター」、「スプリンター・リフトバック」なんかが好きです。それぞれ、カネボウ化粧品、アヲハタ・マーマレード、トヨタ自動車のCMで、印象的なサビが耳について離れません。

 商品は身近だけれども歌に生活感が希薄で貧乏臭くない。しかも音楽としては見事。CMとしては最高でしょう。

CM Song Graffiti Godiego Super Hits / Godiego (1978 日本コロンビア)