少し雰囲気が中澤裕子に似ているななんて思ってしまいました。オペラ歌手の皆さんの中では比較的日本人に受けるタイプの美人ではないでしょうか。

 ルネ・フレミングは、現代を代表するオペラ歌手と讃えられています。もともとジャズ歌手だったそうですが、クラシックに転じると、ドイツに留学して、1989年にロンドンのコヴェント・ガーデンで注目を浴びました。

 帰国後、1991年には夢の空間とも言われる世界のメト、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場にデビューして以降、世界的に大活躍されています。今年はスーパーボウルで国歌を斉唱していますし、2009年のオバマ大統領就任記念コンサートでも歌っていますから、アメリカの国民的歌手ですね。

 この作品は、彼女の才能を見出したサー・ゲオルグ・ショルティが指揮するロンドン交響楽団とロンドンで録音したオペラのアリア集です。彼女はデッカと専属契約を結んでいて、ショルティとともに何作か録音しているようです。

 収められた曲は、モーツァルトの「フィガロの結婚」から、「愛の神よ、安らぎを与えたまえ」と「楽しい想い出はどこへ」、チャイコフスキーの「エウゲニ・オネーギン」から「たとえ死んでもいいの」、ドヴォルザークの「ルサルカ」から「月に寄せる歌(白銀の月)」、ヴェルディの「オテロ」から「泣きぬれて野の果てに一人」、ブリテンの「ピーター・グライムズ」から「縫い取りは、子供の頃には贅沢だったわ」、リヒャルト・シュトラウスの「ダフネ」から「来ましたよ」です。

 何だか曲名を並べるのが楽しいですね。ポピュラー音楽の楽曲とはタイトルの付け方がかなり違いますね。「来ましたよ」って素敵なことこの上ありません。

 いずれも名だたるヒロインたちの歌う有名なアリアだということで、フレミングさんが情感豊かに歌いあげます。もともとジャズ歌手だったそうですし、ジョニ・ミッチェルなどの音楽にも親しんでいたというだけあって、どことなく私にも近づきやすい歌唱です。

 それにショルティ先生の指揮するオーケストラの演奏が素晴らしいです。単なる伴奏の域を超えていると評されていますが、もとより単なる伴奏ではないでしょう。円熟の極みに達したと言われるフレミングさんの歌唱とがっぷり四つに組んで最大の効果を上げています。

 アリア集ですからオムニバス形式なんですが、統一感もあって楽しいです。ソプラノは最も苦手とする領域でしたけれども、この作品ならば比較的気楽に楽しめました。

Great Opera Scenes / Renee Fleming, Sir Georg Solti, London Symphony Orchestra (1997 Decca)