青春映画です。私は青春映画が大好きです。若さとやる気さえあれば何でもできる。そんなことを今さら教えてもらっても遅すぎるわけですが、私は素直に仲間と何かを達成する青春ものが大好きです。面白いですから。

 この映画は、ボーカルとギターが抜けてしまった女子高生バンドが、それまで歌ったことのない韓国からの留学生を急遽ボーカルに据えて、わずか三日後に文化祭でブルーハーツの「リンダリンダ」を演奏するというストーリーです。

 青春映画の王道なわけですが、変にドラマチックになるわけでもなく、微妙な空気感で淡々と物語が語られていきます。山下敦弘監督が言うように「物凄いシンプルな映画」なんですね。それでいて、細かいところに神経が行き届いているので、細部がとても面白いです。「こういうときのことって結構忘れないよね」・・・「なに、ひたっちゃってんの、こいつ」とか。

 それで、女の子たちのバンド演奏は素人感がでるように作ってあります。本当の素人はペ・ドゥナさんだけで、香椎由宇さんと前田亜季さんのパートは奥村晴香さんと伊藤葉子さんというプロの方が演奏してますし、ベースの関根史織さんもプロなんですね。いい感じの演奏ですね。

 と言っても私はペ・ドゥナさんのボーカルが気に入ってこのCDを買ったわけではありません。映画の中で、女の子たちが歩いているシーンなどで流れる音楽が妙に耳について気になってしょうがなかったんです。それで調べてみるとスマパンのジェームズ・イハさんだったんですね。映画も面白かったし、ここは一つ買ってみるかと思いたちました。

 この作品では、ジェームズ・イハさんはとても淡々と音を紡いでいきます。一曲一曲にドラマチックな展開があるわけでもないですし、音数は抑えられています。映画では隙間を彼女たちの瑞々しい映像が埋めていきました。

 しかし、こうして映像抜きで聴いてもとても胸に染みてきます。とにかく音の隙間がいいです。映画の中で流れていた緩いんだか何だかわからない微妙な空気が部屋の中にも流れてくるようです。小品集ということで、イハさんも肩の力が抜けてるんでしょうね。

 彼女たちのバンド、パーランマウムもいいアクセントになっています。主役をアクセントというのも変ですけれども、こうして並べて聴いてみるとそんな気になるところが不思議です。ペ・ドゥナさんの度胸は凄いですね。立派なボーカルです。

 また、指を骨折してバンドを抜けた萌さん役で出ている湯川潮音さんの曲も二曲入っています。癒し系の美しいボーカルがいいです。特に「風来坊」は細野晴臣さんの曲で、ボサノヴァ系のギタリストである伊藤ゴローさんが編曲と演奏を手掛けていて、素晴らしい出来具合です。

 ただ、主人公の一人関根史織さんのベースボール・ベアーの曲が入っているのがちょっとしっくりきません。劇中で使われなかったですし、作品としての一体性を損なう感じがしますね。男子ボーカルですし。

 しかし、私はバンド・メンバー四人の中で関根さんが一番好きです。公式サイトをみるとジェスロ・タル、フランク・ザッパ、鈴木慶一が好きだと書いてあります。いい感じですね。頑張ってほしいものです。

 映画を思い出させる見事なサウンドトラックです。

リンダリンダリンダ(Original Soundtrack) / James Iha (2005 Universal)