コンピレーションというのは楽しいものです。聴き手のことを考えながら、あれこれ考えて曲を選んでいくというのは面倒臭いけれどもとても楽しい作業です。ましてやそれが公式に発売されるとしたら最高ですね。

 この作品はすかんちのローリー寺西さんがセレクトした作品集です。選ばれているのは70年代のグラム・ロック系ロックを中心とした楽曲群で、タイトル通り「B級」、今やほとんど忘れられているものばかりです。残念ながらレーベルしばりがあって東芝に残された曲ばかりなんですが、それでもとても懐かしくて素晴らしいです。

 感覚的には、Tレックス以後、パンク以前が中心ですかね。私の中学校時代、洋楽を聴き始めたばかりの頃で、個人史的にも実に懐かしい時代です。本格的なハード・ロックやプログレの時代でしたが、ポップなロックは影が薄いながらも芳醇な輝きを放っていました。

 冒頭は以前ご紹介したジョーディーの「君にすべてを」、次いでミスター・ビッグの「恋するロミオ」。後者はヘビメタのスーパー・グループとは同名ですが全然違います。さわやかなコーラスがクイーンを思わせる素敵なバンドでした。私はこの2曲だけでこのコンピを買いました。どちらも大好きだったんですよ。

 もちろん他にも懐かしい曲が盛りだくさんです。クリス・スペディングが名前を挙げながらいろんなギタリストのプレイを真似していくありそうでなかった「ギター・ジャンボリー」、パンクとして売り出されたはずなのに、最初から全然違ったモーターズの「エアポート」、この時代を語る時に欠かせないスウィートやパイロット、マッドなどなど。

 ここまでに並べたものはほぼ同じ匂いがするのですが、ローリーさんの個人的な趣味がより色濃く出てくるのは、カナダのクラトゥー、スコーピオンズの初代ギタリストのウリ・ロート、鬼才ロイ・ウッドのザ・ムーヴなどです。私なら選ばないなと思います。そこもコンピ盤を聴く醍醐味ですね。自分ならどうする。

 ローリーさんは「アルバムは通して聞いて気持ちがいいということを目指している」とおっしゃっています。その狙いはちゃんと当たっています。適度にバラエティーに富みながらも、あの時代の空気をよく感じられる構成です。特にブギー。何だかブギっぽい曲が多い。やっぱりブギはイギリスの民謡です。

 ブギを中心とするイギリス系のポップなロックばかりが並ぶ中で、オランダから出たハートが異彩を放っています。これだけ本当にB級です。これぞBの中のB、アルバム発売にまで至らなかったところが素敵です。あの有名なハートとは違いますよ。

 一つだけ難点があるとすれば、英国の雄マッドです。ここでは彼らの代名詞「タイガー・フィート」ではなく「恋のロケット」が選曲されていますが、私は彼らの「クレイジー」が大好きなので、そちらを選んでほしかった。まあこうやってああだこおだ言うのもコンピの楽しみです。

甘美のロックンロール(B級)(1995 東芝)