一瞬、「キャッツ」かと思わせるジャケットです。「春の祭典」のバレエを見たことはありませんが、こんなバレエだとしたら、初演時に大騒動になっていたとしてもおかしくありません。

 「白鳥の湖」くらいしか知らない人が見たら、やっぱり怒り出すかもしれませんね。日本人は大人しいですからブーイングはないでしょうが、欧米人はうるさいですからねえ。ともかく当時としては極めて斬新だったんでしょう。今見ても斬新かもしれません。

 ハルサイ聴き比べの残り一枚です。この二日で何回ハルサイを聴いたことか。さすがに曲を覚えました。ロックンロールな名曲であることが聴けば聴くほど身に染みてまいりました。この曲、何度聴いても私は大好きです。

 サーの称号を持つコリン・デイヴィスさんは英国の名指揮者です。惜しくも今年85歳で亡くなってしまいました。ご冥福をお祈りいたします。サー・デイヴィスはロンドン交響楽団をホームグラウンドとしていましたが、74年にアメリカ遠征に同行して以降、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団と親密の度を深めました。

 そうして、76年11月に二年ぶりに両者が共演を果たします。それがこの「春の祭典」でした。ロイヤル・コンセルトヘボウにとっては何と初のハルサイだということです。客演指揮者に初録音をまかせるとは面白いものです。首席指揮者のハイティンク氏の心中やいかに。

 デイヴィスさんとコンセルトヘボウは77年に「ペトルーシュカ」、78年に「火の鳥」を録音して、ストラヴィンスキーの三大バレエを網羅することになります。このCDには「ペトルーシュカ」が併録されています。CD化に際して合わさったようです。

 プチ聴き比べの結論を申し上げますと、私はこの作品の演奏が一番好きです。ドラティ指揮盤をベンチマークとすると申した舌の根も乾かぬ内になんだとお思いでしょうが、これはベンチマークを越えていると言いたいところです。

 何と言っても重量感があります。ロイヤル・コンセルトヘボウの持ち味だそうですね。骨太、重厚、雄渾、威厳に満ちた演奏です。打楽器と管楽器が大活躍する曲調だけに、この持ち味は大きいです。

 アナログ録音の持ち味であるのかもしれません。演奏全体が一体感を持って迫ってきます。抜けが良すぎるとこうはならないでしょう。音全体の響きが味わえる録音です。靄がかかっているわけではないのですが、デジタルだとくっきりし過ぎるんですよね。

 録音が悪いわけではありませんよ。むしろ空気まで録音されているかのような柔らかでしなやかな音なんです。迫力もあり、各楽器の音色も素晴らしい。デジタルよりもアナログの方が良いという方も多いですが、こういう演奏を聴いていると私も一票投じたくなります。

 ネット批評を見ていますと、概ね絶賛されていることが分かります。しかし、冒険が少ないとも言われています。冒険盤ってどんなんでしょうね。今度はそういうものも聴いてみたいと思います。

Stravinsky : Le Sacre Du Printemps / Colin Davis, Concertgebouw Orchestra (1977 Philips)