ここのところ、毎月欠かさず読んでいる音楽雑誌はCDジャーナル誌だけです。ジャンル横断的ですし、淡々とした紹介の仕方が気に入っています。そして、毎月、誌上で気になったCDを何枚か購入しています。

 このCDもそうして手に入れたものです。13年11月号のCD新譜視聴期で「新世代ラップの傑作」として、推薦盤になっていたんですね。それにジャケットがなかなか購買欲をそそるものでした。

 今の若い人なら、まずはネットで探して聴いてみてから買うんでしょうね。そこが私たちの世代と違うところです。聴いたことのないCDを買ってきてドキドキしながらかけてみる。博打のようなものです。前世代ですねえ。

 ワニウエイブは千葉県在住でラップとトラックメイキングをやっている若いミュージシャンです。いろんな活動をされているようですが、基本は宅録でネットに音楽をアップしている人です。最近はナード文化というそうですが、いわゆるオタクなんですかね。

 コンピューターで作った打ち込みトラックに乗せて、ラップを繰り広げるスタイルですから、ヒップホップそのもののはずなんですけれども、まるで違います。レーベルのサイトには、「ラップなのか、ポエトリーリーディングなのか」とあります。

 ヒップホッパーですと、語りそのものがとても音楽的ですが、ワニウエイブの場合は滑舌も悪いし、リズム感もあるんだか無いんだかわかりません。ポエトリーリーディングと言いきってしまわないと、なかなか上手に鑑賞できそうにありません。

 とても饒舌な歌詞です。とにかく分量が多い。「CDを聴いたら呪われて死ね」「クトゥル腐女子」「僕らと僕らと僕らと僕らと僕らと僕らの仮想敵」「ひそむワニ2013」などキャッチーな題名を持つ詩を叫びます。身の回りの日常をシュールに展開した感覚ですかね。

 トラックはとても可愛らしくてなかなか素敵です。ラップを引き立てるべく、わき役に徹して音数の少ないトラックですし、ささっと作り上げた風情なのですけれども、とてもセンスがいいと思います。本当に可愛らしい。

 インタビューによれば、中学時代は筒井康隆や京極夏彦が好きだったそうですし、大槻ケンジの強い影響下にあったそうです。微妙に隔世というわけでもないんですね。ほー。それにエロゲーのBGMに影響されているんだそうです。エロゲーのBGMなんて鳴らしている人いるんですね。

 名前の由来は、「諸説あるんですがWA(NI)WA(VE)と「WA」が重なるのがカッコいいのと、まあなんだろ、凶暴っちゅうんすか。やってやんぞ感ですよね、ワニ。肉食だし。やってやんぞっていうきもちのあらわれ。」だそうです。分かりやすい人ですね。

 何だか変な作品です。滑舌の悪いラップという新しさもありますし、歌詞も悪くはない。それにトラックが可愛いので、買ってよかったなと思いました。

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ワニウエイブのCDは呪われた! / Waniwave (Low High Who? 2013)

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