寒い冬にねとねとのファンクを聴くのは最高です。鍋物を食べるようなそんな楽しみがあります。

 バーケイズは66年に結成され、現在も続く長寿ファンク・バンドです。もともとはメンフィスのスタジオ・ミュージシャンたちで、ソウルの名門スタックス・レコードの数々のアーティストのバッキングを務めていた人たちです。

 67年にはソウルの伝説オーティス・レディングのバッキングに抜擢されますが、これが悲劇となります。ご承知の通り、オーティスはこの年の12月に飛行機事故で亡くなってしまいますが、バーケイズも多くが同乗しており、4人のメンバーが亡くなりました。

 残されたメンバーは、同乗していて助かったトランペットのビル・コーリーとたまたま別便だったベースのジェイムス・アレキサンダーの二人だけでした。彼らは、めげずにバンドを再建、見事にセカンド・アルバムを完成させます。

 この作品はそれに続く3枚目の作品です。キンキラキンの衣装に身を包んだ鯔背なお兄さん方。まずはこのセンスに脱帽です。演奏も妙な決まり方をしています。ジャケットそのまんまと言えばいいでしょうか。

 彼らはもともとバック・バンドをやっていた人たちです。ですから、基本はインスト・バンドでした。また、オリジナルで勝負というよりもカバー曲で勝負する人たちでした。前者は、このアルバムからボーカリストをメンバーに入れましたから、もうあたりません。しかし、後者はこのアルバムでもそうです。自作曲は1曲だけです。

 そんな成り立ちもいいですね。何だか胡散臭いところが何とも言えない。ファンク界にはJB、スライ・ストーン、Pファンクと押しも押されもせぬ大看板がいるわけですが、そこまでいかない人たち、まさにこのバーケイズなどは、独特の匂いがあります。

 悪い言い方をすればB級なんですね。オルガンの音、フルートの音色、いかにもなボーカル、ファンクそのものというより、ソウルであり、サイケであり、ロックであるような訳の分からなさ。分析しようとするとするりと逃げてしまうような風情です。「ブラック・ロック」とは見事な題名ですね。

 大真面目ではありますが、どこか抜けているような感じですし、やたらと熱いけれども、くすっと笑ってしまう楽しさがあります。アルバム最後の曲はなんと「モンテゴ・ベイ」です。カリプソですよね、これ。それを驚きのぶんぶんベースで演奏しています。何でもありですね。

 独特のグルーヴも嬉しいバンドで、ちまちました悩みなど吹き飛ばしてくれる素晴らしいバンドだと思います。

Black Rock / The Bar-Kays (1971 Volt)