$あれも聴きたいこれも聴きたい かっこいいです。リンプ・ビズキットは嫌われ者のロック・バンドです。このあたりのミュージシャンはお互いに非難合戦を繰り広げることがありますが、レッスル・マニアなんかを思わせます。それも芸のうちなんでしょう。大衆音楽には物語を聴くというところがありますからね。

 そうした物語ごと受け止めるには私が歳をとり過ぎました。どんぴしゃのファンにはさぞや楽しいことでしょう。私も若い頃にはそういう聴き方をしていたものです。そこまで入り込めるのは幸せなことです。

 リンプ・ビズキットは、ハード・ロックとパンクとヒップホップを融合した一群のバンドの一つです。オルタナティブ・メタル、ニュー・メタル、ラップコアなどと呼ばれるジャンルです。そのカテゴリーで調べて出てくるバンドも幅が広いのですけれども、レイジ・アゲンスト・ザ・マシーンなどが近いところでしょう。

 身も蓋もない言い方をすれば、ヘビーなハード・ロックをバックにラップをかますというサウンドです。ただし、ハード・ロックと言っても、感触がデジタルです。もちろん人力なのですが、音の響きがデジタルっぽい。録音機材の進歩もあるのでしょうが、ヒップホップを通過した後のロック・サウンドです。

 ただし、彼らの場合は、ギターの活躍が目立ちます。こういうバンドの場合、ギターはほとんどリズム楽器の一部となっていますが、ウェス・ボーランドのギターはボーカルと同じように存在を主張しています。

 この作品は彼らがデビューして10年を超えた時の作品で、5枚目にあたります。それまで大ヒットを続けてきたバンドから、ギターのウェスが脱退し、数年後に戻ってきてからの復帰第一作になります。あまりプロモーションもされなかったようですが、結構売れました。なお、その後、ウェスは出たり入ったりします。プロレス的なたたずまいですね。

 あまり彼ららしくないと言う人もいるアルバムですけれども、同じようなアルバムばかり出しているとまた余計なことを言われますから、ちょうどそれくらいがよいと思われます。このアルバムは、十分、かっこいいと思います。

 全部で7曲、わずか30分のアルバムです。原題にパート1とあるので、てっきりパート2があるのかと思ったら、それはないようです。疑いようのない真実という題名通り、歌詞に重きをおいたアルバムのようで、彼らの社会に対する考察ぶりが味わえます。それを元気にハードコアにラップしまくるという、カタルシスなサウンドです。

 PVがやたらかっこいいです。もうサウンドから想像される通りの皆さんです。プロレスや格闘技の世界と相通じる世界観があります。実際、彼らの曲を使うプロレスラーも多いようですね。格闘技ファンの私としては、とても心躍るサウンドが詰まっています。何だかこれからリングに向かうような高揚した気分にさせてくれる作品です。
 
The Unquestionable Truth (Part I) / Limp Bizkit (2005 Flip)